伝記

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「「お菓子〜!」」

屋敷に行ってお菓子を見せれば、セルフィとリュックは喜びの声をあげて飛びついてきた。

「人形だけど食べられるの?」
「うん。よくわかんないけどお腹空かない割には食べられるんや」
「その代わりに食べ過ぎには注意なんだけどね」

一応そこら辺は気にしているらしい。
クッキーの袋を開けてやると、二体の人形はクッキーを手にとって食べ始めた。
そこにアーヴァインとギップルが潤んだ目で二体を見つめると、二体はクッキーを食べさせてくれた。

「報告はどうにかなったか?」

ヴィンセントが話しかけてきてユフィは得意気に答えた。

「まーね!感謝してよね」
「ああ、勿論だ」

言いながらヴィンセントはユフィからクッキーを数枚受け取った。
それを食べながら他愛ない話をしていると、少し大き目の鞄があることに気付いた。

「ユフィ、その鞄は何だ?」
「お泊まりセット。また泊まっていい?」
「別に構わないが・・・家に帰らなくていいのか?」
「うん、一人暮らしだし。それにちょっとね・・・」

ユフィの脳裏に今朝の男の姿が浮かぶ。
あの男、休みの日でもちょくちょく訪ねてくるのだ。
その度に追い返しているのだが中々諦めてくれず、そろそろうんざりしていた。

「何か事情でもあるのか?」
「別に大した事じゃないから」
「・・・そうか。それより、一つだけ言っておきたいことがある。つていきてくれ」
「うん?」

ヴィンセントの後にユフィはついて行った。
最初に見た時はそうは思わなかったが、今ではその背中に飛びつきたくて仕方ない。

(やっぱフワフワしてるのかな?)

「どうした?」
「な、何も?」
「心配しなくとも襲ったりはしない」
「判ってるって。で?言っときたい事って何?」
「ここなんだが」

言ってヴィンセントが扉を開けて入った所は書斎だった。
そして壁際に並んでる本棚の内の一つの前に立って、一冊の赤い本をグッと押し込んだ。
すると、本棚が横にずれて地下へ続く階段が現れた。

「おお〜!地下階段!!」
「来い」

ヴィンセントに促されるままにユフィは地下の階段を降りていった。










地下には沢山のワインのボトルが収められていた。

「ワイン?」
「無闇に触るなよ」
「言っておきたい事ってここの事?」
「そうだ。お前の事だから上手い事ここを見つけて何かしそうだから注意しておこうと思ってな」
「案外勘が鋭いね〜。でもワインか・・・」

ユフィはぐるっと見回した後にヴィンセントを見上げた。

「・・・なんだ?」
「アタシも飲みたいな〜?」
「・・・二十歳になったらな」
「もう飲めるっての!」
「嘘をつくな。まだ十代だろう?」
「そんなこと・・・ないもん」
「本当だな?」
「・・・うん」
「本当にもう二十歳なんだな?」
「・・・・・・・・・あと二か月したら」

ヴィンセントは盛大な溜め息をついた。
ユフィは反論する。

「で、でもいいじゃん!!あと二か月くらいさぁ!」
「まぁそうだが・・・ならこうしよう。お前の誕生日の時にここのワインを一本開けよう。それでどうだ?」
「交渉成立!」

そんな訳でユフィは誕生日にワインを開ける約束を取り付けたのだった。
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