伝記

□完結
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任務を終えたユフィはいつも通り本部に行って報告をするつもりだった。
しかし、街に入ろうとしてそこから先の記憶がない。
無いというよりも意識が途切れたのだ。
急に布で口と鼻を塞がれ、そこから急な眠気に襲われた。

「クロロホルムでやられたってか」

我ながらなんとも呆気ない。
ちなみに起きてみたらどっかの部屋だった。しかもベッドの上。
両手は鎖で繋がれていて部屋から出ようにも出られない。

「完全に捕まったっぽい」

いつになく冷静な自分にいっそ笑えた。
笑えたが今はそんな場合ではない。
これはある意味絶体絶命だ。

「ぬぬぬぬぬ・・・!!」

鎖を引っ張ってみるが勿論外れない。
仕方ないので針金で開けようとしたが、どういう訳か開かなかった。
ユフィが悪戦苦闘していると、部屋の扉が開いた。
そしてそこから現れた人物にユフィは凍りつく。

「あ、あんた・・・」
「おはよう、ユフィ。お目覚めはどうだい?」

ユフィに付き纏っていたあの男だった。

「なんで・・・こんなこと・・・」

悪寒に耐えながらユフィが尋ねる。
すると男は気持ち悪いくらいの笑顔で答えた。

「君に会おうとしても任務でいなかったりすぐにどこかに行ってしまうだろう?
 それどころか最近休日は全く家にいないじゃないか。
 だから、もうどこにも行かないようにこうやって繋ぎ止めたって訳さ」
「あ、有り得ない・・・」

ユフィは体を震わせた。
いつかやるんじゃないかとは思っていたがまさか本当にやるとは。

「自分の家だと思ってゆっくりするといい」
「こんなんでゆっくり出来ると思ってんの!?やい、これ外せ!!」
「君が大人しく僕の言う事を聞いてくれたらね」

そう言い残して男は部屋を出て行った。








それからしばらくユフィは男に抵抗し続けた。
出される食事にはあまり手をつけず、男と一切口をきかなかった。



結果、クロロホルムで再び強制的に眠らされた。
次に目覚めた時、今度はベッドの上ではなく床の上での目覚めだった。
腕の鎖は解かれていたものの、やはり逃げる事は出来なかった。

「嘘、だろ・・・」

腕の次に繋がれていたのは首だった。
長い鎖が鉄のポールに繋がれており、辿って行くとそれは自分の首についている輪に繋がっていた。
更に視線を巡らせるとペット用のトイレにエサ皿、ドアノブのないドアが目に入った。
ユフィの背中が一気に凍りつく。
それでもなんとか己を奮い立たせた。
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