伝記

□木の葉隠れの陰日向
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「そ、それよりさ!折角だから遊ぼ!・・・って、元気ある?」
「ああ、少しくらいなら遊べる」
「じゃあ遊ぼ!」

ユフィはヴィンセントの手を引っ張って立たせた。

「何して遊ぶんだ?」
「うーん・・・けんけんぱは?」
「いいぞ」

ユフィの提案で二人はけんけんぱをする事にした。
ひとしきり遊んだ後、ヴィンセントが眠くなってきたのでこの日の遊びは終わりとなった。

「また遊ぼーね」
「ああ。ここで待ってる」

約束を取り交わして二人は別れた。






それからというもの、ヴィンセントは夜になる度にユフィと遊んでいた。
浜辺は広く、人もいないので二人は思いっきり遊ぶ事が出来た。
ユフィと遊ぶ事によってヴィンセントは寂しさを忘れる事が出来、労働も今まで以上の力を出せた。

しかしまぁ、晴れの天候がいつまでも続く訳がなく、嵐の日が訪れた。
天候は荒れに荒れ、雨風乱舞がとてもつもなかった。
そんな日に外に出る訳にもいかず、ヴィンセントは家で大人しくしていた。
暴風でガタガタと鳴る家に臆する事なく書物を読むヴィンセント。
その時、誰かが家の扉を叩いた。

「ん?」

こんな天候時にしかも夜だというのに誰だろうと思いながらも扉に向かった。
もしかしたら誰かが家に帰れなくて困っているのかもしれない。
そう思って扉を開けると―――

「よっ!」

なんと、そこにはユフィが立っていたのだ。

「ユフィ・・・!?」
「遊びに来ちゃった」
「何でこんな日に・・・それより、早く中に」
「お邪魔しまーす」

ユフィが中に入ったのを見てからヴィンセントは扉を閉めた。

「こんな天気に来たら危ないだろう?」
「神様の世界の住人クオリティーで全然大丈夫」
「何でもアリだな」

ヴィンセントは小さく苦笑した。

「何してたの?」
「本を読んでた」
「勉強?」
「そうだ。将来役人になる為にな」
「あー、邪魔だった?」
「そんな事はない。来てくれて嬉しい」
「えへへ、じゃあ今日はおままごとにする?」
「いいぞ」

こうして二人はおままごとを開始した。
ユフィが妻でヴィンセントが夫。
その時間はいつになく暖かいもので、ずっとこのままだったら良いのにとヴィンセントは心の隅で思った。
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