伝記

□今宵の夢は
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「生き残ったのはアタシたちだけみたいだね・・・」
「ええ・・・でも、やるしかないわ」

暗雲立ち込める荒廃した街。
民家は崩れて瓦礫となり、噴水は枯れ果ててただの石の塊となり、植物は生命なき物と成り果てている。
絶望という言葉しか存在しない街にユフィとルクレツィアはいた。
ショットガンとロケットランチャーを手に―――。

「・・・あのさ、やっぱロケランじゃなくて他のにしようよ。途端にギャグになるんだけど」
「えー?でもロケランってロマンがあるじゃない」
「そりゃロケランはロマンだけどさぁ、せめて今の場面だけは他の銃にはしよーよ」
「じゃあ、他のに―――見て、敵よ!」
「うわっ、ホントだ!!」

街の通り道の奥からゾンビの大群がゾロゾロとやって来る。
いち早く気づいたルクレツィアはロケットランチャーを構えて容赦なく撃ち込んだ。

「それ!えいっ!ロケラン最高!!」
「ズルイ!アタシもロケラン使う!!」
「あら、ギャグになるんじゃなかったのかしら?」
「この場面は別!いやっほー!!」

ショットガンからロケットランチャーに持ち帰るとユフィもルクレツィアと同じように構えて間を置かずに撃ち込んだ。
夢の中なので重量や反動はあまりなく、快適に撃てて気持ちが良い。
そうして二人で連射しているとゾンビの大群は跡形もなく消し飛んだ。

「イェーイ!掃討かんりょー!」
「イエイ!」

二人仲良くハイタッチをする。
それはもう満面の笑顔で。

「やっぱロケラン最高だね!持てる弾数が少ないのがネックだけどさ」
「でもここは夢の中だからどれだけ撃っても弾数は減らないわ」
「ということは!」
「つまり!」
「「ロケラン無双!!」」

二人は無邪気に笑い合うとロケットランチャー片手にボスが待ち受けるエリアへと歩き出した。
ちなみにボスというのはルクレツィアがユフィの持っているゲームソフトをなんやかんやして取り込み、そのまま出現させたボスの事である。
つまり二人はゲームの中のボスとリアルに対面出来るのだ。
ゲーマーとして、そして悪を討たんとする戦士としてボスと対面しようとする二人の心は今とても興奮している。
行く手を阻むゾンビをロケットランチャーで片付け、そしてボスが控える部屋へ―――。

「「はっ!」」

バァアン!と大きな音を立てて二人同時に扉を片足で蹴破る。

「片足で蹴破るなんて意外だね。てっきり科学者らしくお上品に開けるのかと思ったよ」
「今の私は科学者じゃないわ。私はエージェント・・・chord name:ダイスよ」
「ズルい。アタシはchord name:ロイヤルで」

キリッとした真剣な顔でchord nameを決める二人。
とってもノリノリである。

『来たな、ダイス、ロイヤルよ。我が野望の邪魔はさせぬぞ』

ボスも中々ノリが良い。
いや、ノリが良いようにプログラムされているのかもしれない。
ラスボスらしく堂々と構える男に、しかし二人は怯む事なくスチャッとサングラスをかけてロケットランチャーを構えた。
そして御託を並べるボスに向かって容赦なく乱射する。

「これよりターゲットを排除する!」
「排除する!」

ユフィの言葉をルクレツィアも追って真似する。
そうして何十発か撃ち込んだ所でボスは倒れ、第二形態が始まった。
巨大なクリーチャーとなったボスが二人の前に立ちはだかる。

「ここからはグレネードとロケランの二刀流で行かせてもらうわ」
「んじゃ、アタシはロケランと手榴弾の二刀流で!」

鬼か悪魔か。
二人はそれぞれが手にしている武器を容赦なく叩き込んでいく。
爆風の絶えないボス部屋のなんとカオスな事か。
そんな威力の強い武器を使っているものだからボスはあっという間に倒されてエンディングになった。
黒煙立ち込める部屋を後にして二人は外に出る。
外では眩い朝日が二人を迎えてくれた。

「終わったね」
「ええ・・・」
「とっても・・・長い戦いだった」
「犠牲も沢山出てしまったわね」
「そうだね・・・」
「それでも私達は前に進むしかないわ」
「うん・・・」
「・・・―――あのね」
「ん?」
「こんな時に言うのもなんだけど・・・私、本国に帰ったら結婚するの」
「ストー―ーーーップ!エンディングで死亡フラグ立てるな!!鬱エンディングまっしぐらじゃん!!」
「いいじゃない、一度言ってみたかったの」
「死亡フラグなのに!?」
「死亡フラグだからこそよ。この後、私が謎の変死体で上がって貴女が孤独な復讐の道を歩むストーリーが始まるんだから」
「え〜?やだ。アタシはハッピーエンドがいい」
「たまにはこういう展開も良いと思わない?」
「全然。ゲームでくらいスッキリさせてほしいよ」
「しょうがないなぁ。じゃあ、仕切り直して他のゲームをしましょうか」

パチン、と指で乾いた音を立ててルクレツィアは世界を切り替える。
すると先程まで荒れ果てた古城だった景色は一転して美しく上品な校舎となり、ルクレツィアとユフィの服装も教師と学生服へと変わった。
二人の周りにもゾンビではなくユフィよりほんの少しだけ年下の若い男女がユフィと同じ制服を着て現れる。
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