伝記

□今宵の夢は
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「次は恋愛シミュレーションをしましょうか」
「お、いいね〜!でも別に恋愛はいいかな〜。雰囲気だけ楽しみたい」

ヒュゥウウ〜(風が吹く)

バサッ(スカートを押さえる)

「じゃあゲームモードはオフにしてこの世界の人物になりきって雰囲気を楽しみましょうか」

「よっしゃ!」

ヒュゥウウ〜

バサッ

「・・・あのさ」

ヒュゥウウ〜

バサッ

「ん?」
「さっきからさ」

ヒュゥウウ〜

バサッ

「アタシのスカートの周りだけ風が吹くんだけど」
「うん、そういう仕様よ」
「どーいう仕様だよ!!?」
「貴女のスカートが捲れる事によって喜ぶ人たちがいるのよ」
「少なくともこの夢の中にはいないだろ!!」
「ちなみに日毎に貴女の下着の色が変わるオプション付きよ」
「いらんオプションつけるな〜!こうなったら―――えいっ」

ピタリとユフィはルクレツィアにくっつく。
どうやら自分の周りに吹く風を利用してルクレツィアのスカートを捲らせる魂胆らしい。
ニヒヒ、と人の悪い笑みを浮かべるユフィ。
しかし、ルクレツィアのスカートは揺れ動くどころか微動だにしなかった。
無風、そう、全くの無風だった。

「・・・どーなってんの?」
「ごめんなさい、私のスカートは『鋼鉄のしずかち○ん』仕様なの。よって捲れる事はないわ」

キリッ

「キリッ、じゃな〜い!ていうかしずかち○んはアタシだし!」

現在のドラえも○のしずかち○んの声優は かがずゆみ さんです。

「ねー、このオプションどーにかなんない?」
「私の気分的には無理かな」
「アンタの気分かい!」
「まぁまぁいいじゃない。それより雰囲気を楽しみましょう」
「むー。ところでそのかっこ何?白衣みたいだけど・・・」
「科学の先生よ」
「まんまじゃん!折角なんだからもっと違う役やろーよ!」
「保健室の先生とか?」
「それも似たようなもんじゃん!もっと他に色々あるでしょ!」
「例えば?」
「ん〜・・・イケナイ数学のせんせーとか?」

ニヤリと笑うとユフィは指をパチンと鳴らしてルクレツィアの衣装を変更させた。
すると白衣は瞬時にピッチリとした紺のスーツに変わり、膝丈上のスカートからは黒のタイツが覗くアブない香りのする数学女教師に様変わりした。
オプションで黒縁のインテリメガネも着ける。

「あら、これはこれで悪くないわね」
「でしょでしょ?」
「新境地が開けそう―――キサラギさん、課題はちゃんと終わらせたのかしら?」

腕を組み、片手でクイッと眼鏡を持ち上げて厳しい口調で教師宜しくルクレツィアが尋ねてくる。
目も鋭く細めているが美人な顔立ちもあって危険な香りが漂う。

「うっ・・・すいません、忘れました・・・」
「あら、イケナイ子ねぇ?オシオキが必要かしら?」

人差し指で軽く顎を持ち上げられ、口元に妖艶な笑みを湛えて迫られる。
演技も中々上手いものでドキリとしてしまう。

(な、なんか・・・ドキドキする・・・!?)

何故こんなにもドキドキするのか?
距離が近いから?
香水の香りがとても良いから?
それとも何かに期待している?
期待?どんな?
もしかして・・・オシオキに?
そんな、自分は女でルクレツィアも女だ。
なのにルクレツィアのオシオキに期待しているのか?
駄目だ、香水の香りで頭がくらくらしてくる。
まともな判断が出来ない・・・。

「ごめん・・・なさ、い・・・」
「そういえば貴女、この間も課題忘れたわよね?」
「う、うん・・・」
「ウフフ、指導室行きね」

瞳を見つめられたままパチンと指を鳴らされ、場所を変えられる。
校庭の風景はルクレツィアの背中の向こうに吸い込まれて変わりにとある一室の風景になる。
生徒指導室だ。
窓際には机を挟んで椅子が一つずつ置かれている。
そして夕日を背にその机の上にルクレツィアが腕を組み足を組んでこちらを見下ろしてくる。
オレンジ色の光が彼女の横顔を妖しく照らし彼女の優位性を示す。
対するユフィは―――

「あ、あれ?何で縛られてるの?」

気付けば両手を後ろで縛られて床の上にペタリと座り込んでいた。
必然的にルクレツィアを見上げる形となる。

「ちょ、ちょっと!何でアタシ縛られてんのさ!?」
「言ったでしょ?喜ぶ人がいるって」

ルクレツィアは静かに机の上から降りると膝をついてユフィと目線を合わせ、顔を近づけた。
そしてシュルリと首元の赤いリボンを解いてブラウスのボタンをいくつか開けて胸元を曝け出させた。
水色の下着と可愛らしい柔らかな谷間が覗いてしまう。

「せん・・・せー・・・」

胸の鼓動が止まらない。
これ以上はいけないのにその先を求めてしまう自分がいる。
ルクレツィアの美しい瞳が自分を惑わそうとする。

「キサラギさん・・・」

背中のゾクゾクが止まらない。
やめなければいけないのにその先に踏み込もうとする自分がいる。
ユフィの潤んだ瞳が加虐心をどうしようもなく煽ってきて感覚を麻痺させようとする。

「・・・・・・・・えっと、この辺にしよっか。これ以上は駄目よ、駄目」
「うん・・・・・・悪乗りしてごめん」
「私の方こそごめんなさい・・・・・・気持ちを切り替えて次の遊びをしましょうか」
「うん」
「でもまだもうちょっとこの学園で遊んでいい?」
「いいよ」

恥ずかしいような照れ臭いような微妙な空気の中、ルクレツィアは景色と服装を変えた。
次の景色は大きなプールサイド。
眩しい太陽が燦々と輝く屋外プールだ。
ルクレツィアは体育教師となり、ユフィはその生徒という設定に変更。
着ている水着は色違いの競泳水着なのだが。
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