異端の神

□霧の籬を吹き払え
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ふぁーあ、と大あくびをして、物の怪は前足を交差させて丸くなっている。

その隣では同じように、黒猫が丸くなり、気持ちよさそうに眠っていた。

それを見ていた彰子が、軽く首を傾けた。

「……ねぇ、昌浩」

彼女がいるのは安倍邸の一室。稀代の大陰陽師安倍晴明の末孫の部屋の簀子で、なぜ当代一の大貴族藤原道長の一の姫、藤原彰子が安倍邸にいるのかは、割愛する。

「昌浩ともっくんとクロて、いつ知り合ったの?」

彰子が『もっくん』、『クロ』と呼ぶのは、つい先ほど大あくびをして昼寝体制に入った白い物の怪と、既に眠っている黒い物の怪のことである。

霜月にしてはあたたかい陽射しの中で、物の怪と黒猫はのほほんと昼寝を決め込んでいた。二匹の毛並みは見た目通りにあたたかいようで、よく二匹で寄り添って眠っている。

物の怪と黒猫の後ろ姿を眺めやった昌浩は、うーんと唸って首を傾げた。

「そういえば、もっくんとはもう半年以上経つんだなぁ」

黒猫とは、物の怪と出会う前から邸にいた為、よく一緒にいた。

しかし、黒猫が物の怪の類であると知ったのは、白い物の怪と出会ってからだった。

物の怪と出会ったのは、春の終わり頃だ。

「彰子には話したことなかったんだっけ」

目を瞬かせて昌浩は頭を掻いた。

「ちょっと長くなるけど、まぁいろいろあったんだよ…」

思いを馳せるように、昌浩の目が僅かに細くなった。













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