原作
□月光
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春陽は暖かく、
今日も人の世を
分け隔て無く照らす。
今は、仲間にすら
…いや寧ろ仲間にこそ、
露呈されてはならない
この逢瀬。
しかし桂は、
何時も閉めきる障子戸を
今日は少しだけ
開けた。
この上無く愛しき者は
未だ破滅の道を
そのか細い脚でもって、
踏み締めている。
部屋の中、座卓の向こう。
崩した姿勢で座る高杉は
桂の入れた煎茶を
啜りつつ、相手の仕草を
無言で見遣った。
戸が開かれ
差し込んで来た光に
軽く隻眼を眇めると、
珍しく持参した荷物を
片手に、桂の隣へ移り
再びゆっくりと
腰を下ろす。