原作

□月光
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共に二人、
柔らかに照らされた
庭の風景を、眺める。

チチッ、チチッ。
遠く鳴くのは、ひよどりか。

「…いい…陽気だな、
ヅラ。」
高杉は呟くと、隣の顔を
そっと覗き見た。

「…そうだな、暖かい…‥。」
そう返した桂が
こちらを向いてニコリ、と
笑うのを見て取った
高杉の顔に、
安堵の微笑が浮かぶ。

その笑顔のまま、
腕の中、長い包みの
結びを解くと、
中より現れたのは、
立派な三味線だった。

「新しい曲覚えたんだ。
春の曲さ。
…俺の猫、聞いて
くれるだろ?」
「勿論だ。
聞かせてくれ。」


少し得意気に高杉は
三味線を抱えると
桂に向け、奏で始めた。
部屋に、庭に、空に。
その華奢な手が爪弾く、
雅やかで繊細な音色が
朗朗と、響いていく。
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