原作

□結い紐
1ページ/15ページ






桜花は、春の嵐を呼ぶと
言う。

折角纏った麗しき
緋色の衣も、
実りの為には煩わしい。
花弁散らせるべく、
桜は自らを進んで
風雨の中に晒すのだ。


儚く散り、踏みしだかれた
花弁が覆う、夜明け前の
まだひと気の無い路地。
何時もの様に傘を
目深に被った高杉晋助は
吹きすさぶ花嵐に
耐えながら、
脇目も振らず急ぐ。


攘夷の巨魁・桂小太郎が
獄に繋がれたと有れば、
自然それは
高杉の耳にも届く。


そんな中。
夜半、桂の元より
使者が訪れた。
…己と桂との件に
絡ませられるとは、
余程信用の置ける
逸材なのだろう。
その者の伝えた言葉

「桂が監獄より戻った」

と。


高杉の足取りは、
更に速さを増して行く。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ