原作

□慈雨
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幕吏やら
春雨やら
なンやら。

薄汚ェ世間ブッ壊す為に、
その世間で最も
薄汚ェ連中と渡り合い
頭付き合わせにゃ
ならねェとは、いやはや
何ともやる瀬ない話だ。

自分迄がどんどん
汚れた畜生染みて行く。
気のせいじゃァ…
とても無ェ(だったらどんなに有難ェ事か!!!)。
いっそ死んじまえば
早かろうと思うが
出来無ェ。
憎々しいこの世界の
阿鼻叫喚を聞く迄は。

そんな時、
心に刻んだ筈の
愛しいアイツの睦言を
こんなにも
無力にする為に
俺の心は、自ら逃げる。



今日も、会合は
抜けて来た。
傍らの万斉に押し付けて。

あいつァ俺の思考に
バカ酔いしてる
訳でも無ェし
近頃じゃ、褥も共に
してねェってのに
…何で、だろな。

「晋助は、今日の会合
きっとまともには
こなさんと思っていた。
外は五月雨。
徒(かち)での道のり…
気を付ける事でござる。」
そう言い、奴は
フと笑った。

見透かされてら。
銀時等の歌に聞き惚れた
とかぬかしやがる手前、
こっちにも
寛大と言う訳か。


まァいい。
今日は特別な日なんだ。
チッ、降りが酷くなって
来やがった。
煙管はお預けか。

傘に張られた油紙を、
引っ切り無しに穿つ水滴の
バタバタと喧しい音の中。
俺は湿気りに弱い相棒を、
懐の奥深く仕舞い込む。
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