原作

□黄葉
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不承不承ながらも
深々と傘被り
俗世より面隠す
この身となれば

これより赴く、
情処へと続く道。
その空が黄金色に
遮られている事に
気付くのも、些か
遅れると言うものだ。

前方より漂う香ばしさに
ふと顔を上げた途端、
視界に飛び込んで来た
イチョウの大木。
改め気付けば、足元迄も
はッ、これはまた
太閤趣味だ。

その輝かんばかりの
秋の彩りに、高杉晋助は
包帯の下、隻眼の鋭さを
若干弱める。

それにしても、この匂い。
いくばくかの懐かしさも
覚える、この匂い。

―少しく、胸
締め付けられる様な――


アイツ、何してやがるんだ。

匂いを辿り、庭から
訪ねる事に決めた高杉は、
そこへと通じる
古びた木戸を
キイと音立て押し開けた。
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