原作

□宿根
1ページ/12ページ






「あーあー、ッたく
万年金欠な誰かさんの
御蔭で逃しちまったー。
パフェーの季節を
逃しちまったー。」

「懐が寒いのは
お互い様だろう。
俺だとて、なかなか
約束を果たせぬ事
どんなに心苦しかったか。
何故貴様は、そんな
傍輩の心中を
解しようと努めんのだ。
だから斯様に、フラフラ
していられるのだな。
どうだ銀時。
心引き締める為にも、
再び俺と共に剣をとら
Σへぶぅッ!!」

顔面目掛け、突如
投げ付けられたフォーク。
余りの痛みに口閉ざし、
顔を押さえてうずくまる。

卓向かいに座る桂の
そんな様子には
一瞥もくれずに銀時は、
側通るウェイトレスを
ひょいと呼び止めた。
「すいませーん。この
ワッフル追加。それから
新しいフォークね。」


此処は、大江戸随一の
老舗フルーツ甘味処・
万疋屋。一皿の甘味代が、
千円を裕に越える。

大分以前に話は遡るが、
桂のバイト先に高杉が
押し掛け、騒動を起こすと
言う事件が有った。
銀時の上手い取持ちで
場は丸く治まったのだが、
その礼として桂は銀時に、
この高級店で甘味を
たらふく奢ると
約束してしまったのだ
(※作者注・「懸想」と言う話に詳細が有ります)


「ヅラァ、あれから一体
どんだけ経ってんのー。
パフェなんざ寒くて
もー食えるかっての。
あーあ呼んでたのによー
季節限定・スペシャル
フルーツパフェが、
この俺をよォ。」

上等なベリーソースが
たっぷりと掛かった
ふわふわのワッフルを
フォークでつつきながら、
銀時は怨みがましい眼で
桂を睨む。

「ヅラじゃない桂だ。
何だ。そんなに不満なら
俺が食ってやるぞ。
何しろ貴様に奢る為、
昨日からずっと
飯抜きなのだからな。」

ソロリ皿に伸びる桂の手は、
銀時に容赦無く叩かれる。
「んごふッ!!」
「何ヅラ、オメー
腹減ってたの?
アハハ美味ェ〜。
こんな美味ェモンは、
俺が独り占めします。
ウェイトレスさん、
も一つオカワリィィ!!」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ