原作

□銀輪
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「あーちょいと止まって。
只今、年末テロリスト撲滅
取り締まり強化
キャンペーン中でねィ、
全くこんな冷える夜に
お互い何時迄も
やってられねーや。
だからよ、お兄さん…

黙って傘取り
ツラ、見せなァ。」


しかし声の主は迷う事無く
既に、己の左側を
確保していた。
コイツ気付いている…
左の視野が効かぬ事を。
己の、正体を。


ひと気も疎らな
かぶき町のとある路上。
立ち止まった高杉晋助の
俯く傘の上、
役人共の声が行き交う。

「おい神山ァ、余計な無線
入れんじゃねーぜ。」
「しかし隊長…!」
「久々の、それも
スペシャルな大捕物でィ。
こいつァ、俺の獲物だ…」

黒服…真選組。
それも隊長格のお出ましと
来たか。
傘上げ面を拝ませて
やれば、既に抜刀していた
相手と目が合う。
元服上がりの如き紅顔の、
しかしその両眼に宿すは
万物を突き刺す様な冷光。


…甘ェな。
修羅迄堕ちるにゃ
まだまだ甘い。
教えてやろうか
手前ェの命に―――


その時、

ガッシャアアアン!!!!

ぐるん、天地が反転する。何が起きたか解らなかった。己の躯は刹那宙を舞い、直後腰に固い衝撃を受け止まった。前後して気付くのは、何かとてつもない力で躯を掴み上げられたのだと言う事。ゲホッ、咳が喉を突く。しかしその間も周囲の景色は目まぐるしく後ろへと流れて行く。何かに乗っている…落ちる!咄嗟の身体能力で体勢を立て直した後、どうやら此処は自転車の荷台である事が解った。尻からげ跨がり直せば、顔面を何かわさわさしたものが引っ切り無しに叩き続ける。

「な…何だ?」
「喋るな、舌を噛むぞ。」

(その声…ヅラか!)

それ以上思考する暇を
与えず、
ドゴォン!!!
己のすぐ脇にバズーカが
着弾する。

「降ろしやがれ、
負ける気がしねェ!!」
「暴れるな馬鹿者が!
しっかり掴まっていろォ!!」

ドォン!!ドゴォン!!
バズーカの猛攻を、
桂の操る自転車は
巧みにかわしていく。
ファンファンファンファン
次いで背後より、威圧的に
響き渡る赤灯の音。
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