似非3Z

□アドベント・カードを君に
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「高杉、これを。」

休み時間に桂が差し出して来た、白い洋形封筒。
アア、もうそんな時期なのか。受け取りつつ高杉は、改めて気付かされる。

桂は毎年12月になると、高杉と自分とに、アドベント・カードを用意するのだ。
そのカードには丁度二十五個の閉じられた小窓が付いていて、めくると、それぞれ違った天使や子供、動物なんかのイラストが出て来る。
毎日一つずつ、記された数字の順に窓をめくって行きながら、やがて来たる聖夜を待ち望もうと言う趣向だ。
何でも桂は幼い頃、欧州帰りの親戚からこの慣習を教わって以来、すっかり魅せられてしまったらしい。

「実は、今年は俺の手作りなのだ。」
そう胸を張る桂に、高杉はフンと鼻を鳴らして、
「じゃア、今月入ってもう何日か経つからな。早速開けるぜ。」ビリビリと封を破り始める。
「あっ…開けるのは、家に帰ってからでもいいんじゃないか?」途端に慌て出す桂。
何だコイツ、自信が有ンだか無ェンだか。構わず最初の窓をめくると、トナカイの着ぐるみ姿の、桂の写真が現れた。

「………。」
「いや、ハッハッハ。待ち切れず開けられてしまったか。
そう、お前のカードには、俺の写真が使って有る…」
「おいバカども何してるアルカ神聖なる教室で相変わらずキャッキャウフフかコノヤロー。」
グルグル眼鏡をキラリ光らせつつ、台詞を棒読みしながら近付いて来たのは、留学生の神楽である。

「リ…リーダー!!リーダーにはちょっと…恥ずかしいぞォォ!!」
「…何だテメー、ガキは向こう行ってろ。」

神楽はハァーと溜息をつくと、
「それがヨー、3Z設定ではこんなうら若き美少女が、テメーらみたいなオッサンと同い年になっちまうアル。世も末ネ。」

「オッサンじゃないぞ!!俺達はまだまだヤング…」
桂の主張を聞き流しつつ、神楽は高杉の持つカードをしげしげと覗き込む。
「面白いカードネ。こんなの私の国にも無いアル。お前、もっとめくるヨロシ。」
「フン。言われ無くともそうするさ。」
「ちょ、やめ、お前以外に見られるのは恥ずかしいぞォォ!!」
桂のうろたえ振りを楽しみつつ、高杉は今日迄全ての窓を、ポチリポチリと開けて行く。
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