似非3Z

□高杉くんの家庭の事情
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「ヅラ、頼みが有る
…明日の休日、俺の実家に付き合ってくれねェか。」

夏の陽射しから逃れるべく、給水塔の影に隠れた昼休み、屋上。焼きそばパンをぱくつきながら高杉が示した頼み事に、桂は五本目のんまい棒(昼食)を一欠けら、ボロッと口端から零した。

「それはまぁ…やぶさかではないが、しかし…ハッハッハ、些か急過ぎぬか。ま、俺の腹積もりは常に決まっているがな。」
「…何と勘違いしてやがンだ。昨日電話が有ったンだよ、バアさんの具合がかんばしく無ェってな。フン、あの手この手で俺を引き戻そうとする輩だ。今回も本当かどうか、怪しいモンだが…」

「…だが、お前は帰ってやるのだな。」
そう微笑み掛ける桂に高杉は、顔を真っ赤にしつつ食べ掛けのパンを投げ付けて、
「五月蝿ェ!手前ェはあの輩にもウケがイイからな、もしもン時は、きっちりフォローしろってンだよ!!」
「解った、解った。あー食い物を投げるな、もっひゃいひゃい…モグモグ」
「おいソコ、食ってンじゃねー!!」



その翌日。二人は高杉の実家の、正門前に立っていた。
強固にして優雅な文様を成し絡み合う、鋼鉄製の大きな門扉。前庭を経たその遥か向こうには、英国貴族の邸宅の如き、重厚な総石造りの豪邸が見える。まるで此処だけ日本では無いかの様だ。

と、

「キャー!!」
「おっかえりなさぁぁい!!」
「兄上ェェェェ!!」

三つの黄色い声調が彼方から見る見る内に近付いて、そのロリータドレスに包まれた、持ち主達の姿を露わにした。

「ハハハ、武さんも栄さんも光さんも、相変わらず達者で何より。」
呑気に笑う桂の横で、鉄門の前、早くも高杉の膝は頽れている。
「お…俺の妹が、こんなに五月蝿ェ訳が無ェ…‥」

ギィッ!!高杉を吹っ飛ばす勢いで開かれた門扉。二人の男はたちまち三人の娘達に招き入れられ、囲まれた。
「武はずっと、兄上の帰りをお待ちしておりました!!」
「兄上相変わらずお素敵過ぎますぅぅ、かっこいいキャー!!」
「見て!このドレス新調しましたのよ、兄上の好きなBABY,の新作!」
「バーカね光。兄上の御趣味はそんなゲロ甘じゃ無くてよ!!」
「何よ栄!そんな真っ黒こそ陰気だわ、カラスみたい!!」
「二人共甘くてよ。今はこの、アリスの如きブルーが主流なのです。」
「ふん。武姉はもう、ロリータ着るにはキツいんじゃ無くて?」
「言ってくれたわね!!そっちこそそんなドピンク、よくも着れたものだわ!!」
「やはり黒こそが至高…闇を纏うが如き、この色…‥」
「だから地味だってのよ!」
「何ですってェェ!!」
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