似非3Z

□銀の桎梏
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バレンタインに続き、アイツの誕生日迄もが今年は日曜だなんてのも、神仏の粋な計らいか。
そうとも。こんな軽佻を晒す程、今日の俺ァ機嫌がイイ。

高校に上がってからと言うもの、ヅラの誕生祝いにゃア毎年、シルバーアクセと決めている。ペアもので名の知れるブランドの、年度限定モデルだ。
…ま、実家からの仕送りは学費程度で断ってるし(それでも何やかやで振り込んで来るんだが)、俺のバイトの稼ぎからじゃ、何時もヅラの分しか買えねェんだがな。
一人で来て片方しか買ってかねェ事に店員も怪訝な風だが、しかし俺ァ機嫌がイイ。何たってヅラの首に、そんじょそこらのチャチなモンなんざ飾れねェ。それに、洒落っ気皆無なアイツの首元でしょっちゅうこんなモンが光ってりゃ、唾付きだってのも一目瞭然って訳だ。

奴の家を訪ね、開口一番「おめでとうよ」と小せェ箱を渡す。クハッ、ヅラの奴、顔真っ赤にして照れてやがる。

「この箱は…高杉、お前また、こんな高価な物を…」
「ククッ…ヅラよ、ココは黙って、喜んどきゃアいいンだぜ。」
相手の首に下がる去年のネックレスを外し、今年のを新たに付けてやる。

「…本当に、有難う。
嬉しいぞ、高杉。」

きめの細けェ白肌に銀を燻した輝きが映えて、今年のデザインも良く似合うぜ、ヅラ。

「…ところで俺の方からも、お前に渡したいものが有るのだが…」

…何だよ。今日は、手前ェの祝い日なんだぜ?

「まぁ、そうなんだが…良かったら、受け取ってくれまいか。」

はにかんだ顔のヅラが渡して来たのは、俺がやったのと全く同じ、小箱。

「ヅラ、こいつァ…」
「開けて、みてくれるか。」

促されて包みを開けば、俺がやったのと全く同じ、ネックレス。

「…どういうこった…‥」
「いや、それはな…去年も一昨年も、お前は俺に高価そうなアクセサリーを贈ってくれて…だがお前の首には、まるで何も付けられておらん。だから、箱に書かれたブランド名を調べてみたのだ。そうしたら、揃いものを扱う店だったのでな。」

「そんな…オイ、コレ高いの、俺知ってるぜ…?せめて、俺の誕生日に…」

「フフ。あとひと月半も待てば、きっと売り切れてしまうだろうよ。俺は、お前と揃いが良いんだ。大丈夫、付けるのに抵抗が無い様、お前のも男物にしたから。」

ヅラのしなやかな腕が俺の首の後ろに回って留め金を繋ぎ、「ああ、お前にも、とても良く似合うぞ。」そのまま背中を引き寄せて、フワリと抱きしめられた。

「…この、阿呆が…。これじゃ、祝いに来た俺の方が…‥」
「…幸せな気分に、なってくれたのか?」
「……バカヤロ、…んッ‥」

腕を振りほどき、罵倒した途端に深々と口づけられる。

「案ずるな。今からお前を抱き、イイ思いを沢山させて貰うのだからな。」
ニッコリと笑いながらベッドへと導いて来る相手に向け、俺も負けじとニヤリ笑みを浮かべる。
「…アア、たっぷりとな。覚悟しとけよ、ヅラ。」
持って来た鞄を引き寄せ、中からアダルトな道具を次から次へと取り出す俺。
「…た・高杉、何だ、それは」
「ン?気にすンな、俺からのもう一ツのプレゼントさ。」

奴の顔が、見る見る朱を帯びつつ引き攣って行くが、フン…何を今更。
何たって俺もお前ェから、男モンを贈られたンだからな。





【終】
――HAPPY BIRTHDAY・桂!
2011jun26 

 

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