似非3Z

□王子ラプンツェル
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程無くして、残念感溢れるBGMと共に画面に浮かぶ『GAME OVER』のドット文字。
「畜生。何でハンマー投げる亀公が、二匹も居やがるンだよ。」
「…ブロスと名が付くからには、それは二匹居るだろう。」
コントローラーをポイと投げ出した高杉に、桂は夜食の盆を改めて勧める。
「ほォ、冷奴か。美味そうだな。…コレで飲みモンも、酒だったらなア。」
「全く、馬鹿を吐かせ。」
冷茶を飲み飲み、上機嫌に箸が進む高杉に、桂は先刻湧いた疑問を投げ掛けてみる。

「高杉、何時も精が出ている様だが…一体、何のバイトをしているんだ?」
「ん、そりゃア…ソロバン塾の手伝いだろう。」
「それは、もう一つの方だろう。こんな夜更け迄働いているのは、どんな仕事かと聞いて居るのだ。」

すると高杉は急に箸を止め、プイと横を向く。
「フン、五月蝿ェな。ヅラには関係無ェこった。」
「そんな、俺に教える事も出来ん様なものなのか?」
「…そーいう訳じゃア、ねーけどよ…‥」

言い澱む高杉へ、桂の一声。「そうか。ならば、今宵は構ってやらん。」

「…ンだとォ?」
「貴様はそれを食ったら即帰るか、さもなくば俺がぐうぐう寝ている横で、配管工を延々操り続けて居るがいい。」
「ンなコト言いやがって、イイのか?…手前ェの方が、寂しいンじゃねーのか?」
「もう既に、お前が俺に隠し事をしている時点で充分に寂しいのだから、これ以上の寂しさなどは、今更何と言う事も無い。」

そう言い放つと、何処からか取り出したナイトキャップ迄被り出す桂。高杉は、とうとう折れた。
「…解ったって。そう大した話でも無ェさ…
何時も寄る、マック有ンだろ。今度そこで、遅番始めたンだ。」
「マ…マックって…高杉、それは接客では無いかァァ!!大丈夫か、大丈夫なのか客は!!!」
「…手前ェは、俺を何だと思ってやがンだ。
まァな。バイト中に他校の番格やらと鉢合わせた時も、ンな顔をされるがな。
だが通うのが楽だし、何せ時給が良いンだ。仕方ねーだろがよ。」

そこ迄聞いて、桂はホッと胸を撫で下ろす。
「…良かった。お前の事だから、また無茶をしては居まいかと…」
すると高杉は、口を尖らせ言い返す。
「オイ。そうそう危ねー橋、渡る訳無ェだろ。こないだ手前ェと誓い合ったばかりじゃねーか
‥…将来の、コトをよ。」
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