お話

□緑の海
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「なーなーギアッチョー」

アイツがまた、わざとなのか無意識なのか知らねぇが、甘えるような、甘ったるい声で話し掛けてきた。

「…断る」

「まだなんも言ってねぇだろー」

「うるせぇな、見て分かんねーのか。俺は今雑誌読んでんだよ。後にしろ後に」

手の甲を相手に向けて猫か犬かをおいやる仕草をする。

「雑誌なんていつでも読めんだろー?オレの頼み聞いてよぅ」

「断る」

「…意地悪…」

あーもう、すぐに泣きそうになる。それがまた女々しくて嫌いなんだ。

泣かれたら、泣かせた方が悪い事になる。
それが大人の常識らしく、リゾットやメローネに俺が怒られる。

「…ったく…分かったよ。聞くだけ聞いてやるよ」

仕方ないから俺が立派な大人になるしかない。全くもって面倒くさい。

「本当?!」

超笑顔になる。
おめぇ嘘泣きか?

「…聞くだけだぞ」

「うん!あのね、オレ、海行きたい!!」

………

「…はァ?」

「そんでね、ギアッチョに連れてってもらいたいの!」

「はァア!?」

なに言ってんだコイツ!

「だってギアッチョ車持ってんだろー?乗せてよー!」

「ふざけんな!お前なんかぜってー乗せねぇし!!だいたい何で海行きてぇんだよ!この時期に!!夏を先取りかこのヤロー!」

「誰も海入りたいなんて言ってねぇだろー!オレは海が見たいの!!」

「そんなんだったらメローネあたりに頼め!!アイツはお前の頼みならなんでも聞くだろーが!!」

「やぁだぁー!オレ、ギアッチョがいいーの!」

意味分かんねぇコイツ…

「なぁな、良いだろー?」

良くねぇよ…

しかし、ここで断るとコイツぜってー泣くんだぜ?
あーもう、本当イライラする。

…………

「……分かった、見れりゃ良いんだろ?」

「うんうん!!」

「そんじゃ外出てろ。車出すから」

「うんうん!」

小踊りしながら玄関に向かうアイツの後ろをノソノソと着いて行く。


あーやっぱ外はまだ少し寒みぃしよ…

なのにアイツは何でそんなに元気なんだ。確か寒いのは苦手だったろうに。



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