お話

□ヒーロー
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「イル、どうしたの?」

「……」


「ねぇイルったら」

「………」

「…だんまり…?」


たまにある、どうにも喋りたくない時が。
心配してくれるメローネ。

ごめん。ごめんね。


時間はもう夜中なのに。原因は帰って来ないあの人。

「………ぅ…」

「イル?」

「…ぅぇえぇ……」

やだよ。自分の泣き顔なんて、大っ嫌い。見られたくないのに。

「…もしかして、リーダー?」

「………」

涙が溢れて止まらない。
だって、10時には帰るって、言ってたのに。今もう1時だよ?


うそつきだ。

オレの世界は、あなたがいなきゃ回らないのに。


「イル…泣かないで…」

好きで泣いてるんじゃない。止めようとして止まるなら、とっくに止めてるよ。

「リーダーなら心配しなくても帰ってくるよ…」

分かってるよ。だってリーダーだもん。
オレが心配してても関係なく、帰ってくる。それは絶対だよ。


「イル、もう寝よう?」

やだ。ずっと起きてる。

「わがまま言わないでよ」

うるさい。わがままなんかじゃない。

だって勝手なのは、帰ってこないリーダーだもん。

「まいったな…仕事中だったら電話かけられないし……」

知ってる。向こうが切ってるから。

だから勝手なんだ。


ばか。
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