アニメ三銃士創作小説

□ラ・フェール伯爵最後の恋
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  〜序章〜

一 細い首筋を絞めつける少年の手。女の美しい顔が苦痛に歪む。息は絶え絶えになり、やがてエメラルドの瞳が静かに閉じられた 一
「夢か…」
最悪な夢を見た。早く忘れてしまいたい、決して忘れることのない記憶。
 窓を開けると春先の爽やかな空気が流れ込んでくる。沈んだ心には心地よいものだった。
 今日から新しい生活が始まるのだ。もう、あの日のことを思い悩むのは止めよう。そう思う反面、新しい生活が始まったからと言って、簡単には忘れられないことも痛いほど分かっている。
“コンコン”
「どうぞ。」
「おはようございます。お目覚めでございましたか。」
 従者のグリモーである。この忠実な従者は、私がこの世に生を受けた時より傍らにいて仕えてきた。ある意味、父親よりも強い絆で繋がっている。当初、単身パリへ出てくる筈であったが、どうしても付いていきたいというグリモーの熱意に負けて連れてくることとなった。
「子供じゃないんだ朝くらい自分で起きれるさ。」
「これは差し出がましいことを致しました。お坊っちゃま。」
「お坊っちゃま!?私はもう、18だぞ。」と思わず苦笑したが、グリモーにとっては俺はいつまでも“可愛いお坊っちゃま”なのだろう。
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