アニメ三銃士創作小説

□ラ・フェール伯爵最後の恋
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「も、申し訳ございません!」
グリモーがあまりにも恐縮するので気の毒になってきた。
「いや、良いんだ。グリモー、今日から私は銃士隊のアトスだ。もう伯爵家の跡取りでもなんでもない。」
そう告げると、私はカザックを纏い家を出た。
「早く忘れるんだ…」

    †
 まだ人通りの少ないパリの街を颯爽と駆け抜け、銃士隊の屋敷に着いた。夜勤で昨日から駐在している隊員を除いては、まだ、誰も来ていないようだ。
 私が馬を繋ごうと厩へと向かったちょうどその時、後方より不意に声をかけられた。
「随分と早いな。」声の主はトレビル隊長であった。総てを包み込むような温もりに溢れる落ち着きと、威厳に満ちた独特の雰囲気が指導者としての才を醸し出している。
「おはようございます。今日からお世話になります。」
「うむ。早速だが馬を繋いだら、私の部屋に来てくれ。」
「かしこまりました。直ぐに伺います。」
私は急ぎ馬を繋ぎ、隊長の部屋へ向かった。
 隊長の部屋は、控室を通り過ぎた廊下の奥にある。私が、控室の前を通ると、タイミング良くその扉が開かれ、夜勤明けと思われる銃士が現れた。少々小太りで、年齢は35、6であろうか。
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