リクエスト小説

□苺のキャンディ
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先生がくれるものは当たり前だけど全て先生のもの。甘い苺のキャンディも淹れてくれる真っ黒なコーヒーも。それに入れすぎているスティックシュガーも肺に吹き込まれる煙草の煙も。全て、全部先生のもの。それを俺は舐めて吸って飲み込んで。
ある日、気付いた。先生がどんどん俺の体の中に蓄積されていっているってことを。先生に貰ったキャンディを飲み込んでそれを胃が吸収して、そうして体の一部になって。
ね、ほら。俺の一部が先生になるの。
教壇の上、きらきら光っている銀色の髪を見ながらちょっとずつ先生のものになっていく自分の体を撫でてみる。先生と話すと先生はめんどくさそうにしながらもきちんと俺に答えてくれる。気だるそうに内緒だぞってお菓子をくれて、真っ赤な瞳が白い睫毛に覆われる。眠たそうに欠伸をしてからぐしゃりと俺の髪をかきまわす。
その体温を味わうためにわざわざ国語係なんてよく意味のわからない係になって先生のもとへ訪れる。 それがいまは日課になって先生は俺が国語準備室のソファーを占領して項垂れていても特に何も言わなくなった。どんどん先生になってく体。先生のソファーを先生の体が占領しているのなら何も言わなくて当たり前、なんて。

「おまえ、ほんっとここが好きだよね」

呆れたように言いながら先生が俺の横に腰をおろす。半ば寝転んでいるのを邪魔に思ったのだろう、悪戯するように片手で腰を掴まれてくすぐったさに体が震えた。

「やめろよ、せんせー」
「ならどけ、じゃーま」
「どかねーよ」

くすくす笑って、体に触れる先生の手から逃れるように体をひねる。たくさん触ってほしいけど、まだだめなんだ。全部せんせーにしちゃってそれからもっと近くに行きたい。俺の全部が先生になったら、その近付きたい気持ちを拒絶されても痛くないはずだから。
…そう、俺弱いの。
自分のまま拒絶されたら、きっと一人で立てなくなる。

「まったく、なんでそんなに気に入ったんだか」
「ソファーがふかふかだから?」
「はいはい」

そういうことにしといてやろうって顔で先生は俺の頭を撫でた。それから突然抱き締められて、ぼすりと二人でソファーに倒れる。
え、

「せ、せんせい?」
「ちょっと仮眠。高杉くん俺の抱き枕になって」
「は、」

物理的に先生が凄い近くにいて、心臓が壊れそうになる。お腹に回った腕が熱くて、首筋にかかる息で泣いてしまいそうになった。
俺の体が先生になっていくたびに俺の気持ちを先生が共有していってるみたいで。どうしよう。最初に心が先生になったら全部知られてしまうのかな。

「おれ、授業、」
「いつも出ないんだからいーじゃんいーじゃん」
「それでも、教師か…!」
「ふふ」
「っ」

ああ、駄目だ。逃げられない。
もう早く、先生になりたいな。



終わり


遅くなってごめんなさい…!
よくわからない八高になってしまって申し訳ないですが捧げます!
らいむちゃんお誕生日おめでとうございますっ(*´∇`*)

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