記念小説を入れていくよ(・ω・´)
□携帯
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俺は携帯。
なんだけどさ。
俺の持ち主…つまり主人のことが好きになっちゃった。
そしたらもう、こいつにかかってくる電話とか、メールとか教えたくなくなってしまって。
内容なんて知らないけど。
電波が悪いんだって嘘ついて。
そしたらそれが。
ばれた。
「銀時!?なんでこんなこと…!」
あーあ。
もうヤケクソだ。
「だって仕方ねぇだろ!!
俺お前のことが好きなんだよ!!でも携帯だから嫌でも高杉と誰かが話してるの聞かなきゃいけないんだよ!!伝えなきゃいけないんだよ!!それが辛いんだ…」
「えっ…。銀時?お前が…俺のこと…?」
高杉は俺から目を反らした。
…そうだよな。
急にこんなこと言われたって困るよな…。
ほんの数秒訪れた沈黙に銀時は機械だというのに泣き出しそうになった。
高杉の返事など聞かなくてもわかっている。
だが、もしかしたら…と口悪くとも優しい持ち主の同情を求めてしまうのは何故だろう。
「…銀、時」
顔をそらしたまま高杉が俺の名前を呼んだ。
そして、ふと気が付いた。
高杉の声は震えている。
なんで?
泣いているのだろうか。
怒っているのだろうか。
…それとも。
確認しなくては。
銀時は顔を上げた。
「………っ」
息をのんだ。
あの高杉が顔を真っ赤にして俺のことを見ている。
微かに揺れる肩とあの声が重なる。
泣いているのでも、怒っているのでもない。
―――照れていたのだ。
「…高杉?」
「う、あ…!!み…見るなぁぁ」
目が合うと高杉はあわあわと手で顔を隠した。
見るなって言われても。
見るに決まっているだろう。
ちょっとナニコレ。
「………」
俺、勘違いしちゃうよ?
「高杉、顔見せて」
「や…っ」
抵抗を見せた高杉の華奢な手首を掴み、顔を覗き込む。
再び目が合うとさっき以上に顔を真っ赤にさせた高杉が目に涙を溜めて睨んできた。
いや、それ逆効果だって。
それに気づかない高杉はやはり睨んだまま、命令とも懇願ともとれる言葉を吐き出した。
「忘れろ…っ」
あーあ、この人俺が携帯だってこと忘れてるよね。
俺がどのくらい色んな事を記録出来るかくらい高杉も知ってるよね?
忘れろなんて。
「無理」
「…っ主人の命令だぞ」
そうですね。
でも俺、携帯としては性格最悪ですから。
ていうか。
「………忘れられるわけないじゃん」
「……っ」
せっかく伝わったのに。
「高杉だったら忘れられるの?」
「…っ、忘れられる訳ねぇだろ!!」
俺も同じだ。
高杉と過ごしてきた日々だって忘れちゃいない。
俺の中に常にあり続けている。
人間はすぐに忘れてしまうかもしれないけど、俺は違う。
メモリーの中にずっとずっと残り続ける。
だから俺は願うんだ。
人間に恋した携帯はみんな、願っているんだ。
「あぁ、忘れんじゃねーぞ」
貴方の心のメモリーに残り続けることを。
「…ん」
俺は高杉をぎゅっと抱き締めた。
機械だから体温などはわからない。
だけど、凄く凄く。
温かく感じた。
「…高杉ぃ」
「ぎん、とき…」
嗚呼、やばい。
メモリーにこんな幸せを残して大丈夫だろうか。
「…忘れない」
「ありがとう、高杉。愛してる」
俺は携帯。
この子は持ち主。
人と機械の恋なんて望みのないものかもしれない。
けれど、高杉が俺の想いに答えてくれるのなら。
きっと俺達にとっては何物にもかえがたい大切な大切な恋になる。
ねぇ、高杉。
聞かせて?
曖昧な答えじゃなく、はっきりとした言葉で。
だって俺、機械だから曖昧な答えはよく理解出来ないんだ。
機械にもわかる、簡単ではっきりした答えを俺に下さい。
「銀時…っ」
「うん」
「…俺も」
「……」
「……」
「……」
「だからそれだけじゃわかんないって」
「……っ銀時ぃ」
あーあー。
高杉、顔真っ赤。
全く何処まで恥ずかしがりやなんだろう、俺の主人は。
「…俺も?」
「……ぃしてる」
「うん」
「…俺、も…愛してる」
「…っ高杉!!」
携帯と人間の恋なんて叶わないと思ってた。
所詮、俺はただの機械で人間と人間を結ぶための道具。
間違っても人間と俺達が結ばれることなんてないんだ。
ないはずだったんだ。
たった今まで。
それがどうだろう。
「銀時ぃ!!」
俺達はどうしようもなく惹かれて。
求めて。
結ばれた。
こんなに凄いことはない。
「…これからも沢山のメモリーを作ってこうね」
「うん」
そう。
沢山の思い出を。
終わり
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