□電車の中で※
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講義が一時限目から入る時は最悪だ。朝のラッシュの時間帯に電車に乗らなければいけないから。
ぎゅうぎゅうと押され、扉に体を押し付けられる。肩掛けの鞄が変に引っ張られて苦しい。最近、女性専用車両なんて出来たものだから男ばかりで凄まじく暑苦しいし、ああもう気持ちわりぃ!
身動きが取れず、扉に額を当ててなんとか息をする。電車で窒息死する奴もその内きっと出てくるだろうなんて考える。それでも二・三駅過ぎれば落ち着いてくるのだから体に力を入れてなんとか立っていた。


「…………?」


違和感を感じたのはようやく固定された体勢に慣れた頃。後ろにいる人に妙に密着されている気がして、何か嫌で。少しでも離れられるように更に扉に凭れかかる。そうすると後ろの奴も着いてきて、あろうことかするりと尻を撫でられた。


「っ!?」


驚きのあまり、体が固まる。だが、きっとたまたま触れただけだと、思いたいが手はそのまま無遠慮に尻を揉んできた。何を考えて触っているのだろう。俺は男だ。確かに髪は少し長めかもしれないが間違えるな。


「…っ、おい、やめろ」


男と気付かせるように小声ながらも声を出す。俺の低い声を聞けば確実に男だとわかるだろ。そう思ったが手は前にまで回ってきて、スラックスの上から俺の自身を掴んだ。


「!」


やんわりと確認するように触れられ、それから布越しに亀頭を指でぐりぐり弄られる。その行為に体が戦慄いて、というか男だと完全にわかったはずなのにどうしてこいつ離さねぇんだ!?
急に怖くなって手足を動かし逃げようと抵抗する。しかし男は両手を簡単に押さえ、自身を強く握ってきた。


「ひっ!」


その痛みに体が硬直する。一瞬、まさか痴女かと思ったが押さえている手はどう見ても男のそれで。そういえば親父でも痴漢に合うという話を思いだし背筋が凍った。俺が動かなくなったからか男の手がスラックスのベルトにかかる。それに反射的に振り向いた。


「やめっ」


振り向いて、相手を確認してまた体が固まった。バッチリと目があって相手が優しく目を細める。

俺に触っていたのは俺の知ってる人だった。


「…………」


正確には俺の方だけ知ってる人。綺麗な銀髪と紅い目を持った同じ学部の先輩で。その容姿と人当たりの良さからかなり有名な人で、俺もたまに学内で見かけてはつい目で追ってしまう、坂田銀時。
そんな人がなんで痴漢なんてしてるんだ。
驚きのあまり顔を凝視する。そうすると坂田は苦笑して耳元に唇を近付けてきた。


「見た目怖くてごめんね」

「はっ?」


囁かれて、いや、謝るとこは其処じゃなくね?
俺の反応に坂田は楽しそうに笑うと、手を動かすのを再開してきた。


「ちょ、な、なんで!?」

「…あれ?痴漢されてる自覚あるよな?」


ベルトを緩められスラックスに手が入ってくる。自身を直に触れられ体が跳ねてしまった。それを耳元でくすりと笑われ顔が熱くなる。首筋にねとりと舌が這い小さく声が漏れた。


「へぇ、気持ちいんだ。濡れてきた」

「…ッッやっ、違っ…ぁ」


嘘だろ。
坂田が言うように俺の自身は緩く立ち上がり、垂らした先走りを指が塗り込むように触れる。だんだん足にも力が入ってこなくなり、首を振った。気持ちいいなんて、そんなわけ、


「ちょっと君、どうしたの?顔、赤いし具合悪い?」

「ふぁ!?え、…う」


不意に坂田の後ろにいたサラリーマンが心配そうに声をかけてきた。
助かった。これで。
けれど、助けを求めるのは恥ずかしすぎる。しかしこれ以上触られたら。


「…っ!!たすけ」

「ちょっと、人に押されて疲れちまったみたいなんです。俺が見てるんで大丈夫ですよ」

「ああ、なんだ兄ちゃん、連れか。なら大丈夫だな」

「はい」

「…なっ」


ひでぇ。こんなに平然としてるもんなのか痴漢って。ギロリと後ろを睨む。それに笑顔で返されて目が潤んだ。指が尿道口を掻く。小さく水音が聞こえ、腰が揺れて、もう。


「ひぁ、んんッッ」

「ちゃんと声、殺せよ。痴漢されてよがってるのばれちゃうよ?」

「……ッッ」


どうしてだよ。
学内で、ただ見てるだけだった人なのに。痴漢なんて最低なのに。


「…っ坂田先ぱ、ぁあッッ」

「え?」


根本を強く握られて、とうとう下着に精液をかけてしまった。それでつい名前を呼ぶと驚いた声が耳元であがって。

…下着が濡れてしまった。これじゃあ、大学で講義なんか受けられない。

体が何故か熱くなってて。


「え、なんで名前?」

「……………」


坂田を見る。紅い目が動揺からか揺れている。しかし手ではスラックスを直してくれて。
それをにやり、笑ってみる。呼吸が整わなくて、ああ、なんだろう、何か変な気分だ。
笑って口を動かす。
坂田先輩、無表情がいつも通りで、


「…まさ、か、先輩にこん、な趣味がある、とは、知りませんで、した」


かっこいいです。


「…………」


もうすぐ駅につく。降りる駅ではないけれど。
押さえられていた手が解放された。それを今度は自分から握って向かい合う形になるよう体を無理矢理動かす。


「…俺の正体が知りたければ」


次の駅で。



終わり






急展開だけど続かない。
管理人は銀さんが痴漢しても高杉のが銀さんを好きになるように設定を作る謎な思考回路を持っています。



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