いろいろだよ(・ω・´)弐

□弐拾漆
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下駄箱で高杉と神威の靴を確認する。この焦る気持ちはただの杞憂であると信じたかった。高杉は校内にいると。神威は他校の生徒か、とにかく高杉ではない誰かと遊んでいるのだと。
しかし、俺の思いは通じずそこにはきちんと二人の上履きが入っていた。


「―――くそッッ!」


拳を握りしめる。イラついている場合ではない。二人を探さなければ。
校門を飛びだし、辺りを探す。神威が高杉に何かすると決まったわけではない。なのに、どうしてもこの前までのやりとりのせいか、頭が最悪な事を考える。
傷つけないで、ほしい。
高杉をかき回さないでほしい。
女になって、子宮ができて、子供ができると知って、あの子は少しずつおかしくなっていってる気がするんだ。
そりゃあ、俺だって高杉に子供が出来たなら嬉しいよ。それはもう壊せない繋がりになるものなのだから。でも、子供を産むという機能に固執する気もないんだよ。

産めなくたっていいんだ。高杉がいたら。

それでも、あの子は女になってしまって。きっと、怖かっただろう。やっぱり女の方がいいと感じているんじゃないかと。だからせめて少しでも形にと。子を孕めたらと。でも高杉は男なんだ。戻ってしまう。不安になっていた。


「…っ俺の、せいでッッ」


子宮にほしいと言われて。求められて。産まなければと感じてる気がした。俺のせいで女でなくてはならないと考えてしまっている気がした。なのに、言われるがままに中に出した。受け止めてくれることが嬉しくて。
高杉は何を思ったろう。


「――ぱちっ」

「!」


不意に路地からか細い声が聞こえてきた。慌ててそこに駆け込む。路地を少し行くと、首から血を流した高杉が壁に背をつき項垂れながら立っていた。


「ぎんぱち」

「……高杉」


辺りを見回し神威を探すが気配はない。焦る気持ちを落ち着かせ、ゆっくりと近付く。高杉は両手で何かを大切そうに握りしめていて、幸せそうに微笑みながら俺を見た。


「ぎんぱち、喜べ」

「首、どうした?神威にやられたのか」

「大丈夫だ、もう痛くない。それより、聞いて」

「……うん」


微笑みが満開の笑顔になる。体の力は抜けているようだが、本当に嬉しそうに高杉が笑う。痛々しくて仕方がない。なんだか泣きそうになる気持ちを隠すためにぎゅっと抱き締めた。血の匂いが鼻を掠める。
あああああ


「神威がな、子供を産める方法教えてくれたんだ」

「………ッッ」

「あのな、校長室にあった香水は被るより飲んだ方が効くらしくて、飲むと1年は女のままでいられるらしいんだ」

「……高杉、」

「俺、ぎんぱちとの繋がりを産めるようになったよ」

しあわせ

「……………」


高杉が握っていたのは空の香水のビンだった。
俺、お前をどれ程追い詰めてしまっていたんだろう。
そりゃね、高杉が女だったら子供を産ませたろうさ。そして、大切に育てるよ。
でもね、


高杉がいたら、それでいいんだよって。
きちんと、伝えたかったよ。





続く







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