短編2
□夏のバカップル
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(現代・ヒロイン高校生、山崎大学生)
畳の上に寝そべってテレビをみていた。平日の夕方にやっているバラエティ番組で、芸人たちのくだらない恋愛トークが繰り広げられている。
「草食系と肉食系かー。あたしは肉食のほうがいいな、さがるくんは草食だけど」
「……」
「告白されるのは直接がいいか、それとも手紙か? いやー、直接でしょ。さがるくんは手紙だったけど」
「……」
何を言ってもさがるくんは無言で、つまんないなあと思ったら、ぐえ。背中からのしかかられた。
「重いけど」
「知ってるけど」
なら退けよ。
さがるくんはあたしの上にうつぶせになって、首元に顔をうずめてきた。
ちょ、なんだこの体勢。おかしいよ。サンマが二枚積み重なってるみたいな。別にサンマじゃなくてもいいけど。
「あたし今汗臭いよ」
「そうだね」
「否定しろよ。あたし学校じゃあ男子に『石鹸の匂いする』って言われてんだからな! 香水だけど!」
「プッ」
「うん失笑とかやめてくんない? シカトしてくれたほうがよかった」
さがるくんは伸びをするときみたいに「ん゛ーっ」と唸ってから、顔を上げた。それから、あたしの頭の上にこん、と顎をのっける。さがるくんもテレビを見るようだ。
テレビ画面はカラフルに光ってて、騒々しい音楽と笑い声が絶え間なく流れてくる。
「おっ、『地味男のための恋愛塾』だって! 見なきゃさがるくん!」
「うるさいな」
「ぐえっ、なんで首絞める! さっきまでラブラブしてたのに!」
「してないよラブラブなんか」
「じゃあ何だよこの体勢!」
「サンマの二枚重ね」
「……気が合うね。同じこと思ってたよ」
「恋人だからね」
番組はクイズコーナーに移ったようだ。芸人たちの珍回答が飛び交ってる。くだらないけど面白くて、声を押し殺して笑ってると、さがるくんに頭をはたかれた。笑い声が気色悪かったらしい。ひどい。
フッと、画面に真夏の海辺が映し出される。なに、全問正解者には『大江戸ビーチ二泊三日ご招待』だと! 青い海と白い砂浜のコントラストが、きれいだった。
「あぁ、海いきたいな……。でも宿題あるからな」
「俺やってあげようか」
「マジで!」
「手伝うだけだけど。だからさ、」
「ん?」
「今度から、石鹸の匂いの香水、つけてっちゃだめだからね」
「……ん」
夏のバカップル
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