短編2

□夏のバカップル
1ページ/1ページ

(現代・ヒロイン高校生、山崎大学生)



畳の上に寝そべってテレビをみていた。平日の夕方にやっているバラエティ番組で、芸人たちのくだらない恋愛トークが繰り広げられている。


「草食系と肉食系かー。あたしは肉食のほうがいいな、さがるくんは草食だけど」

「……」

「告白されるのは直接がいいか、それとも手紙か? いやー、直接でしょ。さがるくんは手紙だったけど」

「……」


何を言ってもさがるくんは無言で、つまんないなあと思ったら、ぐえ。背中からのしかかられた。


「重いけど」

「知ってるけど」


なら退けよ。
さがるくんはあたしの上にうつぶせになって、首元に顔をうずめてきた。
ちょ、なんだこの体勢。おかしいよ。サンマが二枚積み重なってるみたいな。別にサンマじゃなくてもいいけど。


「あたし今汗臭いよ」

「そうだね」

「否定しろよ。あたし学校じゃあ男子に『石鹸の匂いする』って言われてんだからな! 香水だけど!」

「プッ」

「うん失笑とかやめてくんない? シカトしてくれたほうがよかった」


さがるくんは伸びをするときみたいに「ん゛ーっ」と唸ってから、顔を上げた。それから、あたしの頭の上にこん、と顎をのっける。さがるくんもテレビを見るようだ。
テレビ画面はカラフルに光ってて、騒々しい音楽と笑い声が絶え間なく流れてくる。


「おっ、『地味男のための恋愛塾』だって! 見なきゃさがるくん!」

「うるさいな」

「ぐえっ、なんで首絞める! さっきまでラブラブしてたのに!」

「してないよラブラブなんか」

「じゃあ何だよこの体勢!」

「サンマの二枚重ね」

「……気が合うね。同じこと思ってたよ」

「恋人だからね」


番組はクイズコーナーに移ったようだ。芸人たちの珍回答が飛び交ってる。くだらないけど面白くて、声を押し殺して笑ってると、さがるくんに頭をはたかれた。笑い声が気色悪かったらしい。ひどい。

フッと、画面に真夏の海辺が映し出される。なに、全問正解者には『大江戸ビーチ二泊三日ご招待』だと! 青い海と白い砂浜のコントラストが、きれいだった。


「あぁ、海いきたいな……。でも宿題あるからな」

「俺やってあげようか」

「マジで!」

「手伝うだけだけど。だからさ、」

「ん?」

「今度から、石鹸の匂いの香水、つけてっちゃだめだからね」

「……ん」



夏のバカップル



.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ