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□清潔
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「ん……何時だ…?」

今日は仕事のない日だと分かっているのだが、窓から差し込む明るさについ目を覚ましてしまった。今日はゆっくりしようと思ったのだが。壁時計を見ると7時を過ぎたところだった。

覚醒するといつもと何ら変わりない風景。だがいつもなら朝食の支度をしているはずのピノコの鼻歌が聞こえない。彼女もまだ寝ているらしい。そんなことを考えていると完璧に目が覚めてしまった。2度寝も出来そうにない。まぁ、家でゆっくりすることには変わり無いなと思い、布団を剥ぐ。いや、剥ごうとした。
そう、剥ごうとして身動いだんだ。


「ぇ、え?………え?」

なぜか私の腕のなかにピノコが。さっきからちょっと暖かい感じはしてたし、昨日私が酔って帰って来たのをいいことに私のベッドに潜り込んだのかもしれない。いやなにより、彼女と一緒に寝ることは珍しい事ではなかった。恐い夢を見ていても、いなくても。だから大して問題ではない。


―――断っておくが、彼女とは世間一般では“親子”と呼ばれる関係を保っている。心身ともに、とは言えないが、身だけは。
今まで幾度となく直面してきた危機――風呂上がりに真っ裸で居間をうろつく彼女や、大声で泣きながら私のふくらはぎに抱きつく感触――それらに必死に耐えた私の努力はどこへ行ったのか。
ただ言い訳を一つだけ。誰がこの状況を親子と呼ぶのだろう。いや別にいつも通り一緒に寝てるならよかったんだ。彼女が先に起きてなくても。



だからつまり、今私と彼女は一糸纏わぬ姿で一つのベッドに入ってるわけで。
ついに…ついにやってしまったか、私は。いや、そんなことは……と思いつつ、昨日の記憶が殆どない。
よくピノコが見ている昼ドラマの展開である。まぁ、ドラマの場合“やっちゃった?”と言うのは大体女だが。
確認、あくまで確認のために布団を剥ぐとやはり裸の彼女が横たわっていた。

やはり、最後までいったのだろうか……成人してから殆ど感じた事のないとんでもない不安を感じ、これからの彼女との関係が崩れる事を思うと泣きそうになる。
そんなことを考えながらも視界は彼女をしっかり映しており、どうしようもない愛しさが込み上げてくる。
何度も私を危機に陥れた太もも、いつも守りたいと思わせる小さな手、足。唇に掛かる髪、あどけない寝顔。
ふと、誰かの手が彼女の太ももへ伸びてるではないか。それも男の手。誰だ!と思った腕は私の手だった。

……疲れているのかもしれない。いやそうだ。起きながらにして無意識状態なのだから。
このままでは絶対に彼女に手を出す。そうだ、裸だからいけないのだ。もう起きて服を着よう。密着した彼女の体をひっぺがしたとき、案の定彼女は覚醒した。

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