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□帰宅
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「ただいま」

「あ、先生!ろこ行ってたの!」

「ぁ、いや、ちょっと手塚に用があってな」

「朝早かったんらねー。ご飯たべゆ?」

「あ、あぁ」




なんだなんだ。
恐ろしい程にいつも通りだ。



「朝起きて先生いなかったからびっくりしたんらよ?いつも教えてくれるのに」

「ちょっと急いでてな…」

「ふーん。まぁいいけろ」



いただきまーすといつも通り元気に食べ始める彼女。
いかんいかん、油断してると見つめてしまう。
普段と変わらずに自分の今日の報告をしだす彼女。いつもほぼ聞いてないが、今日はいつにも増して話が入ってこない。そして物を口に入れる作業に緊張して手が動かない。

「先生?聞いてゆ?」

「あ、あぁ。聞いてるよ」


全然聞いてないです。


「はー、お腹いっぱい!ごちそうちゃまでちた!ピノコ明日早いかやお風呂入るねー!」




「…はぁ……」


自然にため息が漏れる。
さっさと食べて寝よう。


冷えた夕食を食べ切り、ソファに座り込む。今日は疲れた。精神的に。
家にいてこんなに彼女の目を気にして、緊張するなんて。今まで生活できていたのが信じられない。
が、もう腹を括るしかない。なるべく冷静を装おう。


「先生ー!お風呂あいたよ」

「早かったな。」

「うん。」


昨日と同じ、私の横に座る彼女。


「先生」

「ん?」

「今日はキチュしないの…?」



がんばれ、黒男。
踏ん張りどころだ。



「お前いつも許可なくするじゃないか」

「だって、昨日は先生からしてくえたんだもン…」


珍しく彼女が照れている。
しかしここでがっついてはいけない。



「してほしいのかい?」

「…うん……」


きた。


「そうか…ほら、おいで」


昨日と同じく、私の膝に跨り、向き合う。
自然になる上目遣いが、堪らない。



「先生?」

「ん?」

「してくれないの?」

「ふふ…ピノコ、目を閉じて」



きゅ、と私のシャツを握る仕草が可愛い。
写真に残したいくらい。
滅多に見れないその顔を、焼き付けるようにギリギリまで目を開けていようと決めて顔を近づける。

でも、やっぱり。



「ぷ、ピノコお前歯に海苔付いてるぞ」

「!!!」

「その顔じゃちょっとなぁ」

「…先生のいじわゆ!!!ばかー!!!!」



一気に寒くなる膝。恐らく彼女は寝室へ走って行ったのだろう。ビンタされなかっただけ良かった。

はっきりいってあのままキスしてたら、また手塚のところに行って家に帰るというループである。
気持ちは増えるばかりだが、どうやら冷静さもちゃんと取り戻したらしい。良かった。

とりあえず今日は、夕食に焼きそばを作った彼女に完全に救われた。




えんど。
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