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□花火
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「暑い…」
今年の夏は一体どうしたんだ。梅雨が終わったと思ったら猛暑、不安定な気候。ゲリラ豪雨に竜巻。一年中コートを着ている私でも、さすがに参ってしまう。
「先生!サボってないれちゃんと掃除して!」
私よりはるかに体感温度は高いはずなのに、堕落することなくいつも通り働く彼女。その精神力には感服だが、しかしなんでったってこんな日に私はわざわざ真っ黒な車を洗っているのか。
「先生、早く掃除済ませて出かけゆんれしょ?」
「あぁ、家の中は終わったのか?」
「あらまんちゅ!あとお皿洗うだけよのさ!」
「じゃあ昼飯食ってから出よう。確かこの前手塚からもらった冷麦あったろ。用意して待っててくれ。」
「はーい」
ひたすらに車に水をかけているとラルゴが水を浴びにやってきた。いつもなら追い払うが、今日はしょうがない。気持ちはよくわかる。だが。洗剤がかかっても知らんぞ。
「わ、先生すごいタイミング。」
「お、冷やし中華風か、うまそう」
今年の夏、こうして声をそろえていただきますしたのは果たして何回目だろう。それが習慣化している彼女の手前、余計なことは言えないが、せめて今日で気休めになれば、とも思う。
「ねえ先生」
「ん?」
「今日ろこ行くの?」
「どこって、買い物さ」
「デパート?」
「とか色々な」
ふうん、といった彼女は全くふうんしてなかった。別に嘘をついているわけではないのだが、こういう時にやはり彼女は女性なんだと確信する。まああまり気にしない。
「よし、飯も食ったし出るか」
「あ!ピノコ部屋着のまんま!」
「私も着替えなきゃな…ピノコ、暑いからワンピースにしなさい」
「え?!…先生は?」
「?私はいつも通りだよ」
「あ…わかった!着替えてくる!」
ワンピース…まあまた同じようなワンピースに着替えてもらうのだが(笑)さすがにズボンをはかれるとあとが面倒なのでね。
「先生!お待たせ!」
「ん、じゃあ行こうか」