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□銀の世界で熱に溺れる
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銀色。

意識が途切れる瞬間、それを見た。











朝起きた時にはもう、頭痛がしてた。

熱を測ると微熱だったため学校へ来たものの、時間がたつにつれてどんどん具合は悪くなるばかり。

今日だけは休む訳にはいかないと思い学校に来たが、このままだと真面目に倒れてしまうかもしれない。

保健室に行った場合、家に帰されてしまう可能性が高いため、屋上で休もうと思い、だるい体を引きずり屋上の前まで来た。

ドアを開けると、少し肌寒いくらいの風が吹いた。

火照った体に心地よく、気を抜いた瞬間猛烈な目眩に襲われた。

視界が反転し、透き通るような銀色が見え―――目の前が真っ暗になる。



「なまえ!!」



名前を呼ばれた気がしたが、声の主が誰かはわからなかった。




















「…ん」



目を覚ますと、白い世界が広がった。



ここは…保健室…?



朦朧とする頭で必死に思い出そうとする。

不意にドアの音がし、人が入ってきた。

足跡がベッドの方へ近付いてきて、カーテンが開かれる。



「お、気が付いたんか」



カーテンの向こうには、コート上の詐欺師―――仁王雅治が立っていた。

いきなりあらわれた仁王に驚き飛び起きると、またも激しい目眩に襲われた。



「まだ寝ときんしゃい」

「何で仁王がいるの…?」



横になった私の質問に、仁王は持っていた荷物を床に置いて答えた。



「お前さんが屋上で倒れたけえ、ここに連れてきたんじゃけど…迷惑やったかのう?」

「ううん、ありがとう」



そう言って少し微笑むと、仁王も安心したように笑った。



「まだ顔色悪いし早退するかの。家まで送っちゃるよ」

「え、大丈夫だよ」

「俺がしたいからええの」

「あ…うん。じゃあお願い」



私がそう言うと、仁王は床に置いていた荷物を持った。

それは私の鞄で、教室から持ってきてくれたのだろう。

仁王の優しさに笑顔が溢れた。




 
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