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□いつかまた、そう思えるまで
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ハー…


丸めた両手に息をはきかけると、指の間から白い煙がもれた。


時折犬の足跡と飼い主であると思われる人間の足跡が付いているだけの真っ白な道路を歩くと、サクッサクッと雪を踏む音がし、周りの静けさに吸い込まれるかのように消えた。




首に巻いているマフラーに顔を埋め、両手をポケットの中にいれて歩きながらふと、寂しい、と思った。


去年の冬は、そんなことは思わなかった。


俺を見て笑うあいつが、一年前は、まだ隣にいたから。


俺が初めて惚れて、初めて俺から告白した唯一の相手。


あいつが隣にいれば、いつも心が温かくなった。


俺らしくない、と自分でも何回も思ったし、周りの奴等にも変わったと散々言われた。


それでも、あいつさえいれば何もいらないと、そう思った。


―――それほどまでに惚れていた。


あいつも俺のことが好きで、お互い上手くいっていると、思っていた。




別れを告げられたのは、今年の3月。


高校2年の終わり、付き合って1年がたった頃だった。


別れよう、と言ったあいつに理由を聞くとゴメン、と一言だけ言われた。


理由もわからず、俺とあいつは終わった。


留学した、と聞いたのは3年になってから。


しかも人伝だった。


なんで俺に話してくれなかったんだ、と思う傍ら、嫌われた訳じゃないのかと思い、正直ホッとした。




別れた今でも、1年たった今でも、俺はあいつが好きだった。


だから新しい彼女もつくらず、告白も断っていた。


これがいつまで続くのか、なんて聞かれても、俺にもわからない。


でも、いつか俺にまた、一緒にいたいと思える奴が出来るまで。




「…愛しとぉ…」




呟いた一言は、足跡と共に周りに吸い込まれて消えた。






(雅治…)(また会いたいなんて、私の我が儘)
いつかまた、そう思えるまで




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