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□果てしなく一方通行
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誰もが幸せな世界なんて
きっとないんだ
「おはようございまーす!」
「おう、おはよう!」
「おはようさん」
部室に入りながら挨拶をすると、返ってきたのは先輩達の声。
その中には私の好きな人の声も混ざっていて。
いつも通りの、幸せな朝。
「おはよう、なまえちゃん」
「おはようございます、小鳥先輩」
もう一人のマネージャーである坂石小鳥先輩は、可愛くて誰から見ても完璧な人。
私の憧れの人でもある。
部員のみんながコートへ出ていき、部室には私と小鳥先輩の二人きり。
「…で、雅治先輩とはどうなんですか?」
「えっ!?な、何言ってるの、なまえちゃんてば」
慌てながらも誤魔化す先輩に、心臓がぎゅっと握られたような感じがした。
誤魔化さなくたって知ってる。
小鳥先輩が雅治先輩のことを好きなことくらい。
そして、雅治先輩も小鳥先輩のことを想っていることも。
だって、私も好きだから。
雅治先輩のことを、ずっと見続けてきたから。
雅治先輩の名前を出しただけで顔を真っ赤にする小鳥先輩にも、愛おしそうに小鳥先輩を見る雅治先輩にも、
私の入る隙間は1oも無いことを実感する。
日々引退が近付くたびに、先輩達のことを考えては涙が出るのだ。