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□キャンディーレインを君に
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コツ、と何かが頭に当たった。小さい痛みにまだ完璧には起ききっていない脳を働かせ眠い目を開くと、目の前には大量のアメ。驚いている隙もなく、それらが俺の顔へと降ってきた。



「何じゃ!?」



慌てて上半身を起こし振り向くと、イタズラが成功したような楽しそうな顔で笑うなまえがいた。なまえの足下―――先程まで俺が寝ていたところには色とりどりのアメが散らばっている。



「慌てる仁王なんて滅多に見れないよ」
「何がしたいんじゃお前さんは」
「んー、あえて言えば遊び?」
「何じゃそりゃ…」



笑いながらあっけらかんと言い放つなまえに、思わず呆れてため息。あ、俺今幸せ逃げた。



「ため息つくと幸せ逃げるよ仁王クン」
「誰のせいじゃ誰の」



何て言いながら、同じこと思ったんじゃな、なんて少し嬉しくなったのは内緒だ。



「で、何しに来たん?今授業中じゃけど」
「仁王に会いに」



どこか妖艶な笑みを浮かべるなまえに、耳がじんわりと熱を帯びる。それを隠したくて、その場に座って膝に顔を埋めると、なまえもストン、と俺の隣に座った。カサカサ、とビニールの音がして、先程落としたアメを集めているのだとわかった。



「仁王」



音が止み、頬の熱さも和らいだ頃、不意に名前を呼ばれた。睡魔に襲われていたところだったため、寝ぼけ眼で顔をあげる。くすっ、と笑う声が聞こえ、唇に温かい、柔らかい感触。いきなりのことに一瞬で目が覚める。するりと口内に入ってきたのは、何やら固いものだった。なまえが離れ、残ったのはオレンジ味のアメが一粒。俺の顔はきっと、先程とは比べ物にならないぐらい赤いのだろう。



「誕生日プレゼント」



俺とは正反対に、何事も無かったかのように微笑むなまえ。



「〜っ、何するんよ…」
「あれ、嫌だった?」
「…嫌じゃ、なか」
「ならいいじゃない」



ほんとにこいつは、さすがの俺でも何を考えているかさっぱりわからない。もしや、誰にでもこういうことをするのだろうか。そう考えると、胸がズキ、と傷んだ。…俺は乙女か。



「そうやのうて…そういうんは、好きな奴にでもやりゃあよかろ」



ぶっきらぼうな言葉に、ほんの少しの期待を込めて。



「だから、やってるでしょ」
「…え?」
「好きな人、だもん」



期待をしていた、とはいえ本当に何事でもないかのようになまえが笑うから。俺の顔はもう茹で蛸のようだった。



「仁王、さっきから赤くなりすぎ。可愛い」



からかうように言われたのが悔しくて、目についたアメを取って口に含んだ。



「なまえ」
「んー?な、」



笑いながら振り向いたなまえの言葉を、奪った。なまえは一瞬だけ驚いた顔をしたが、またすぐに微笑んで俺の背中に手をまわした。



「俺も好いとう」



二度目のキスは、爽やかなマスカット味だった。





キャンディーレインを君に
(私マスカット嫌い)
(…なして俺お前のこと好きなんじゃろ)






*****
はい、ということで仁王くんお誕生日おめでとう!
…1週間遅れましたごめんなさい(´;ω;`)
公演の千秋楽やら体調崩すやらで全然サイトにこれませんでした…。
来年こそはもうちょっとまともに…!!!
仁王くんに最大級の愛を!
 


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