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□詐欺にかかって
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「11秒68」
どこがギリギリだ!
私にとっては差は大きいっての!
おまけに私の自己最高よりも速いし!
「ま、お前さんの負けじゃの」
仁王が笑いながら言ったから、ムカついて少し拗ねながら「命令は?」って聞いた。
「俺が今から聞くことに、正直にこたえること」
それだけ?
あまりにも簡単だったから、拍子抜けしてしまった。
「わかった」
「ん。じゃあ…」
何を聞かれるのか、全く予想がつかなかったから、仁王の言葉を待った。
「お前さんは俺のこと、どう思っとるんじゃ?」
………は?
何を言っているんだ?こいつは。
「こたえんしゃい」
そんなんこたえられるわけないでしょ!?
私が仁王のこと好きだなんてっ……
「ほぉ…お前さん、俺のこと好きなんか?」
え?
今、仁王……なんて?
「……えと……私、今、声に出て…?」
「おう、バッチリな。んで、好きなんか?」
この詐欺師がっ…
きいてたならわかるくせに……!
「………好き///」
恥ずかしくて、下を向きながら、きこえるかきこえないかぐらいの小声で言った。
「俺も好いとうよ、なまえ」
「え………?」
仁王が……私のこと好き…?
嘘だ……
「嘘だと思っとるじゃろ?いくら俺でも、こんなときに嘘は吐かんよ」
じゃあ…本当に………
「付き合ってくれるかのぅ?」
そんなのもちろん…
「喜んで…」
――……って言ったところで、クラスのみんなの前だったことに気付いた。
女子の視線が―…って思ったけど、なんでかみんな優しい目をしている。
?と思ってると、丸井が近付いてきた。
「仁王、やっとかよぃ」
「うるさかよ、ブンちゃん」
「なまえーよかったね!!」
友達も集まってきて、周りで微笑んでいる。
「……みんな、知ってたの?」
「何を?」
「私が仁王のこと好きだって……」
誰にも話してないのに……
「だってわかりやすいし」
えー……
私の苦労はなに?
………まぁ、いいか。
「よろしくね、仁王」
想いが通じるなんて思ってなかったし。
仁王とこれからもいられるんなら……。
(でもやっぱり負けたのはムカつく)(しょうがなかろ)
詐欺にかかって
→あとがき