光と闇の巡間で

□側にあるもの
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城に戻ると、風衣が走ってきた

「姫様ッ!!」

『…私は、大丈夫…』

袿を羽織らせてもらった

「風衣、斎姫を休ませてやってくれ
俺は唯世と共に芳月様の許へ向かう」

「は、はい…」

ふらつく体を風衣がそっと支えてくれた

「志那、お前も付いていってくれ
悪いが…この城さえ、安全とは限らないからな」

「御意のままに」

平均身長はあろう風衣より頭一つ大きな志那
風衣は少し驚いた

「斎姫様、少々失礼いたします」

ふわっとした浮遊感

志那に抱き上げられていたみたいだ

『…大丈夫、だよ…歩ける』

志那は溜め息を吐くが、そのまま私を部屋まで運んでくれた

『あ…りがと、志那』

「いいえ…無理は、なさらないでください

…風衣殿、と申されましたよね?
申し訳ないのですが、手拭いと…桶に水を張ってきていただけませんか?」

「え?…あ、今すぐに!」

風衣は走っていった

『…ねぇ、志那』

「なんでございますか?」

優しく微笑む志那
きっと、母様が生きていたら、同じように笑うだろうな

『…どうして、唯世は来てくれたのかな?』

「…私は、主より姫を守るように命を受けました

斎姫様は主の許嫁であられる方
いずれは、我が主にもなりうる方

それに…唯世様は許嫁である姫を常に気をかけておられます」

志那は唯世の話をするとき、いつも優しい顔をする

それは、唯世があの人≠フ話をするのと同じ顔

『私も…唯世の大切なもの≠ノなれたかな…』

「姫は昔から、あの方の大切な方です」

足音が聞こえてきた

「失礼します、志那殿、持って参りました」

「ありがとうございます風衣殿」



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