光と闇の巡間で

□波乱の始まりは
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「斎姫」

『なんでしょうか?父様』

「たまには城下に降りぬか?」

優しく微笑む父様

『…何故、ですか?』

「斎姫も一度は城下を見てみるのも良かろう?
光雅でも連れて行くと良い」

「…失礼いたします」

光雅が静かに入ってきた

「そういうことだ、頼んだぞ

あと、姫と言うことはバレぬように…」

光雅は一礼して私の手を引く

「あぁ…姫様、光雅様
此方へ」

風衣ではない女房

「風衣様は、少しばかり用事があるらしいので…」

女房は苦笑いした

『あぁ…なら頼むね』

「はい、私は諌穂にございます」

『…い、さほ…ね
よろしく』

諌穂は柔らかい笑みを浮かべ、私を部屋へ連れていく

「城下に、姫と隠して行かれるのなら…あまりにも格好が目立ちます」

そっと諌穂は落ち着いた色合いの着物をだす

簡素な物で、それでもなかなか上質なものであった

「斎姫様の母君様、花姫様の着物です

花姫様は斎姫様に着て欲しいと言っておられました」

『…母様が…』

「はい…
それと…長刀を持たれる訳にはいきませんので…
こちらを」

諌穂の両手に乗るのは短刀

「護身用にございます…
光雅様がおられれば、心配には及ばないと思われますが…
念のためにお持ち歩きください」

『…そうね、ありがとう』

着物を着せて貰い、髪を緩く束ねた

「はい、出来ました!」

姿見に映された姿は普段の私とは違った

『じゃあ、行ってくるね』

「はい」

部屋から出れば光雅がいて
彼は銀髪を隠すように頭に布を巻いている
その姿は町人のよう

「…ククッ、斎姫か?」

『フフッ…光雅?』

お互いに見慣れぬ姿に少し笑みを溢す

『では、行くね諌穂』

「お気をつけて」

優しく微笑んだ諌穂

その笑みは、少し不審だった



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