連載

□時のダイス@
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双六のマス目には何も書かれていない。つまりサイコロを振り、進んだらカードのような紙を引く、そして書かれたの内容に従うというものらしい。
交互にサイコロを3回ずつふり、ヒカルは25マス、アキラ20マス進んだ。
今まで出た指示はすべて、双六相手と9路盤で碁を打つことだった。勝つと2マス進め、負けると2マス戻るという但し書きがしてあった。
「次、塔矢の番だよ。」
「うん。」
アキラはサイコロを振った。
出た目は5と5だった。
「10だね。」
アキラは自分のコマを動かした。
「1…2…3…4…5…6…」
「これさぁ、ずっとこの9路盤で打つだけなのかなぁ?」
「そうなんじゃないのか。7…8…9…10。」
「ふ〜ん。」
やると言い出したのはヒカルだったくせに、プロ棋士の二人が9路盤で打ったところでなんの面白い味もなく、代わり映えのしない内容にヒカルはやる気をなくしていた。
「もうすぐ終わるよ。」
あと1・2回サイコロを振れば終わるところまで来ている。
アキラは、飽きてしまってるヒカルを見て笑った。
始める前、嫌な予感を感じ取ったアキラとしとは、何もなく終わってくれればそれでいいと思っていた。
「カードひくよ。」
「あぁ。」
アキラはカードに書かれた文字を見た。
「どうせおんなじだろ。さっさと打とうぜ。」
ヒカルが白石をじゃらじゃらといじった。
「え…今度は違うよ…、『25年前、己」
アキラが内容を読みだした。すると、アキラの持つカードが黄金色に光り始め、アキラの身体もだんだんその光に包まれていく。
ヒカルはビックリして、目を見開いた。
「塔矢?」
「ゆかりの棋士のもとへ……」
アキラの声が次第に遠くなり、読み終わると、一段と強い光が広がた。
「とーやぁぁぁ!」
ヒカルは慌ててアキラに手を伸ばしたが、一瞬目が眩むほどの光がおきて、アキラは光と共にヒカルの前から消えた。
し ん ど………」
「とぉやぁぁああっ!!」
ヒカルは自分の見た光景が俄かに信じられない。目の前にいたはずのアキラが突然消えてたなんて。
ヒカルは慌てふためいた。資料室の中を探し回った。
「塔矢ぁ!塔矢ぁ!ふざけんなよ!出て来いよ!塔矢。」
佐為が消えた時のことがヒカルの脳裏に蘇った。
自分の前から突然大事な人が消える。胸がひきちぎられそうな思い。
やだよ…。やだ…
なんで塔矢まで…
塔矢まで俺の前からいなくなるなんて!
返せよ!返せぇ〜。
ヒカルは力無く床にしゃがみ込んだ。
自分が双六をやろうと言わなければこんなことにはならなかった。箱に書かれた文字を読み、時を越えて佐為に逢えるかもしれないと思い込んでしまったが、アキラが消えるなんて考えもしなかった。後悔がヒカルを苛んだ。
「塔矢ぁ〜、とーやぁ。」
ヒカルはその場から動かず、うなだれてた。
しかししばらくすると、ヒカルはキッと顔を上げた。
いつまでこうしていても仕方がない、とヒカルは双六の箱や入っているものを隅々まで調べた。
アキラが消えた原因はこの双六、ここに戻る方法もあるはず。
箱には先程読んだもの以外は何も書いていない。9路盤もなにも仕掛けはない。
手掛かりになるものは何もなかった。それでもヒカルはめげずに方法を探した。
もう大事な人を無くすのは嫌だ。世界中でただ一人、愛するアキラを失うなんて嫌だった。
その一心でヒカルは考えに考えた。
指示が書かれたカードのような物は、すべて白紙。どうやらこれが何かの鍵を握っているらしい。
サイコロを振って、これをめくると指示が現れる。アキラが消えたのをヒカルは目にしている、白紙から文字が浮き出ることくらい何の不思議はない。
アキラは何と言っていたか?
『25年前、己ゆかりの棋士のもとへ』
ヒカルは床に落ちているサイコロを拾った。だが、サイコロは一つしか見当たらない。周りを探してもどこにもない。
ヒカルは構わず、サイコロ一つを叩き付けるように、ヒカルは強く床に投げた。
「続けてやるよ!25年前にいけばいいだけじゃねーか!」
出た目は6。ヒカルはコマを進めカードを引いた。
「待ってろ塔矢!今行くからな。」
ヒカルの手にしたカードが光だす。ヒカルは指示を読んだ。
「『導かれし棋士、我がもとへ』…、なんでだよ!我がもとってどこなんだよ!」
アキラ同様、ヒカルの身体も光を纏った。
「25年前じゃねーのかよっ!もう!とぉやあぁぁぁ……」
そして、一瞬まばゆい光を放ち、ヒカルも資料室から消えた。



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