Short Story(2008)

□お見合いCrisis★
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信じられんねー!
俺というものがありながら…!
俺はムカついていた。
搭矢と付き合って2年以上経つ。付き合ってからは、あいつの親がいない時は、ほとんど一緒に暮らしている。
男同士だから結婚は出来ないけど、俺は一生搭矢といるつもりだ。搭矢だってそうだって思ってた。
なのにあいつは、俺に何にもいわねーで、俺の目を盗んで、見合いをしやがった!
3ヶ月も搭矢先生が日本にいるってのがそもそもおかしいかったんだ!
遡ること2ヶ月前…

「なんで!?なんでだよぉ!?」
「知らないよ、そんなこと。」
ベッドの中で深く愛し合った後、いちゃいちゃしてたら、搭矢が急に声色を変えて、両親が日本に長期滞在する話をした。
いつだってそうだ、搭矢は言い難いことはHの後に言う。
まぁ、その方がいくらか言い安いってのはわかる。俺もたまに使う手だから。
「中国棋院はどうしたんだよぉ〜?」
「だから知らないって。…仕方ないだろう、帰ってくるって言うんだから。」
「そうだけど、3ヶ月は長いよぉ。」
「……本当だね。」
付き合ってからそんなに離れたことはない。
俺は独りでこの家に3ヶ月もいることを考えたらゾッとした。
「俺、耐えられるかな…。」
「僕も…。」
搭矢に淋しそうな瞳で見詰められたら、自分だけが辛いだけじゃない、搭矢もおんなじなんだってわかった。
「僕は親の監視下にあるわけだけど、君は僕がここにいなくても、やんちゃしないでくれよ。」
「やんちゃ?」
「女の子と遊びに行ったり…」
「するわけねーだろ。」
「こられる時はくるから。」
「うん。ちょっとでもいいから、来いよ。」
搭矢があんまりカワイイこと言うもんだから、一回したのに俺はまた搭矢が欲しくなった。
「搭矢…も一回。」
「あっ……しんっどぅ…。」
「当分出来ないし、俺のこと忘れないように…な!」
「……ぁぁ…しん…ぁッ……ど…」
結局あと一回じゃ終わらなくて、明け方まで、搭矢を愛しちゃったわけだ。

というのが2ヶ月前。
俺に『やんちゃするな』『女の子となんだかんだ』って言ってたくせに、搭矢は一昨日見合いをしたんだ。
来られる時は来るとも言っていたのに、この2ヶ月一度として家に来なかった。
1週間前に棋院で会って以来、搭矢とは会ってない。メールをしても、電話をしても「忙しい。」の一点張りでろくに会話もしてない。
だから直接聞いたわけじゃない。
棋院で芦原さんが聞きもしないのに、ベラベラと喋ってった。おかげでわかったから感謝しなくちゃいけないんだけど、話を聞いてる俺は、どんどん機嫌が悪くなって、芦原さんは逃げるように俺の前から去ってった。
搭矢の見合い相手は、搭矢家の遠縁の人。遠縁と言っても搭矢とは初対面らしい。歳は俺らよりちょい上、芦原さんもはっきりとは知らないと言っていた。短大を出て商社に勤めているそうだ。
わかったのはこのくらい。
搭矢に年上の女を宛てがうなんてところはさすがに親だ。
搭矢はしっかりして、堅物、けどかなりのわがままさんだから、年下の女じゃ、手に負えないだろう。けど、年上で社会人としてちゃんと働いてるなら、搭矢をうまく甘えさせてやれるってふんだんだろう。確かに的は当たってる。
でもなぁ、搭矢を甘えさせられるのは、俺だけなんだよ!
なのに、俺だけなのに、なんで見合いなんかしてんだよ!!
いやだ、女に搭矢を取られるなんて、ぜってぇ〜やだ!
俺は、搭矢にメールした。
『話がある、今夜こい!』
でも、搭矢は来なかった。
代わりメールが来た。
『ごめん。忙しいから行けない。』
忙しいって何だよ!
搭矢の仕事のスケジュールは全部知ってる。
夜が空いてないわけがない。
親がいたって、1日くらい出て来られないはずない。
翌日も翌々日も同じメールをしたけど、返事もおんなじ。
どうしたって言うんだ。本当に見合い相手と結婚するつもりなのか?
そんなことあるはずない…。
あるはず…ない。



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