Short Story(2009)

□シンデレラBOY〜宵闇★
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注)こちら『シンデレラBOY』の続きです。アキラの女装のいきさつ説明は全くありません。まず『シンデレラBOY』を先にお読みになるとわかりやすいです。


初めてデートらしいデートを楽しんだヒカルとアキラは、23時ちょっと過ぎに、二人で暮らすマンションに戻ってきた。
「搭矢の荷物、明日和谷が持ってくるってさ」
「そう、わかった」
ヒカルは自分とアキラの寝間着をクローゼットから出した。
「はい、これ」
「ありがとう」
寝間着を渡されたアキラはそそくさと寝室に入っていった。
ヒカルはアキラの前で平気で裸になるが、毎日を共にしながらも、アキラは恥ずかしがっていつも違う所で着替える。
それに今夜はドレスを来ているから、余計に恥ずかしかった。
アキラは部屋着をベッドの上に置くと、ドレスを脱ごうと背中に手を伸ばした。
が、うまく手が届かずファスナーがおろせない。
(一体どうやって脱げばいいんだ)
どちらかというとアキラは身体が軟らかいほうだが、慣れないせいか、どうやってもうまくいかない。
数分かけて少し下ろすことが出来たが、胸の締め付けは全く変わらなかった。
両手が肩甲骨の辺りをパタパタと叩く。
女性は普通にこれを脱ぎ着出来るものかと不思議に思う。
アキラが悪戦苦闘している間に、ヒカルはタキシード脱ぎ終わり、リビングからアキラに声をかけた。
「搭矢ぁ。俺、シャワー浴びてくるな」
「うん。……あっ、ちょっと、待って!」
アキラはヒカルを呼び止めた。
どう頑張っても一人じゃ脱げないとふんだアキラは、仕方なくヒカルに助けを求めることにした。
アキラは寝室からヒョコっと顔を出した。
リビングにはパンツ一丁のヒカル。
それを見てアキラは少々顔を赤らめた。
「あのね進藤、背中のファスナーを、下ろしてくれないか?」
申し訳なさそうにアキラが言った。
「ああ、いいよ」
ヒカルは何の気無しに頷いて、寝室に入った。
寝室は薄暗かった。
着替えるだけなので、電気を点けなかったらしい。
アキラはヒカルに背中を向けた。
「手が届かなくて…」
「届かなくて、どうやって着たんだ?」
「無理やり着せられたんだ、自分で着たんじゃない」
「ははは…そっかそっか」
ヒカルは笑いながら、ファスナーを見た。
ファスナーは2センチくらい下に下りていた。しかし、1番上に小さなカギホックが付いていて、それがまだ外れていなかった。
さすがにこれは慣れていないと、一人では脱ぎ着できない。
暗いからよく見えず、ヒカルは顔を近付けた。
すると、アキラのうなじが目に入った。
いつも髪がかかって見えないアキラのうなじ。今夜は髪をアップにしている為、あらわになっている。
アキラのうなじはとても美しかった。
白い肌と黒髪のコントラストが、色気を漂わせていた。
それに、少しだけ下りたファスナーの間から覗く白い肌が、これ又なんとも言えず美観だった。
ヒカルはゴクリと唾を飲み込んだ。
「進藤?」
なかなかファスナーを下ろさないのを不思議に思い、アキラが声をかけた。
しかし、ヒカルはアキラの肌に見とれるばかり。
(肌までいつもより綺麗じゃん。ヤバイよ…これ…)
男とは思えないほどのキメの細かい透き通るような白い肌は、ヒカルを誘惑する。
寝室に入った時は、ヒカルは全く下心がなかった。明日は二人とも手合いだし、大人しく寝ようと思っていた。
しかし、こんなに色気を振り撒かれては、ムラムラと下心は湧いてくる。その気にさせられてしまう。
すでにヒカルの下着の中は兆候を表し始めていた。
「進藤、早くファスナーを…、あっ」
焦れたアキラが急かそうとしたら、首筋に濡れた感触がして、思わず声が途切れた。
誘惑に負けたヒカルが唇を落としたのだ。
「何してるんだっ!」
アキラは勢いよく振り返った。
「僕はファスナーを降ろしてくれと言ったんだ!」
「下ろすよ、下ろすけど…。お前の肌がさぁ、俺を誘うんだもん」
ヒカルは舌を出して、へへへと笑った。
「なっ…………、僕は誘ってない!」
アキラは一瞬言葉を失い、次の瞬間真っ赤な顔をして怒鳴った。
アキラの怒鳴り声など日常茶飯事、これしきのことで怯むヒカルではない。
いったんその気になったら、簡単に引くヒカルではなかった。
「誘ってるさぁ〜、舐めてって言ってた」
「言うわけないだろっ!」
「言ってるさぁ」
ヒカルはアキラの肩に手を置き、二の腕、肘へと、下にゆっくり滑らせる。
それから後ろからアキラを抱きしめ、誘惑するうなじに顔を擦り寄せた。
「ほら…また言った…」
一気にヒカルの声色が変わった。
「触ってって…」
たった今まで甘ったれた感じだったのに、低く艶めいた声で言う。



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