ありがとうございます!
楽しんでいただけますか?
御礼SSがございます。今回は穏やかな二人の日常です。お楽しみいただければ幸いです。


御礼SS第30弾

ヒカアキの日常
〜極上の幸せ〜

《1ページ/2ページ》

囲碁普及のイベントの仕事を終えて家に帰ると、キッチンでは、短めのギャルソン風サロンを巻いた進藤が、夕飯の支度をしていた。
部屋の中には、進藤が作っているであろうカレーの匂いが漂っている。
「ただいま」
僕が進藤の脇まで行くと、
「おかえりぃ」
と言って、進藤は包丁を置いてサロンで手を拭くと、僕に触れるだけのキスをした。
「君の方が早かったんだね」
今日進藤は棋院で対局があった。
「結構早く終わっちゃったんだ」
「勝ったのか?」
「当然だろ」
「そうか」
僕が軽く笑うと、進藤の手が優しく頬を撫でた。
「疲れた顔してる」
「……うん、少し…疲れたかな」
僕は進藤の手に自分の手を重ねた。
大切な仕事なのはわかっているが、僕はイベントの仕事が好きではない。
多くの人と話さなくてならないのが僕にとっては苦痛だった。
その上今日は、スポンサー先の接待の指導碁も有り、不得意なお世辞を言い、愛想笑いを続け、精神的にとても疲れた。
進藤はそれをすぐに察知してくれる。
「風呂沸いてるから、ゆっくり入ってこいよ」
「うん。ありがとう」
進藤に促され、僕は風呂場に向かった。
風呂は僕の好みの温度にセットされていた。
対局をしてきた進藤だって疲れているはずだ。
なにせ今日の対局は、天元リーグ戦。相手は倉田さんだった。
簡単に勝ったみたいに彼は言うけれど、倉田さん相手に簡単に勝てるわけがない。
ずいぶん神経を擦り減らした対局だっただろうに…
食事の支度に風呂の用意までさせてしまって、少し申し訳なく思う。
汗を流して、適温の湯舟に浸かれば、疲れた身体が少しずつ癒えていく。


風呂から上がると、夕飯の用意がほとんど出来たようで、テーブルに並んでいた。
並んだ物を見て、僕はいささか不思議に思った。
浅葱、みょうが、生姜に大葉。
カレーには不似合いのものばかり。
「カレーじゃないのか?」
「あ…うん」
僕が聞くと、進藤は照れ臭さそうに笑った。
「お前食欲あんまりなさそうだから、そうめんの方がいいかなぁって」
「風呂に入っている間に用意したのか?」
「まぁな」
進藤が言うように食欲がないのは確かだった。
僕はひどく疲れている時、あまり食べる気が起きないないのだ。
確かにカレーのように香辛料が効いた濃い味のものより、そうめんの方が有り難い。
進藤はなんでもお見通しなんだ。
「ありがとう」
こんな時、僕は彼の優しさに素直に甘える。
キッチンと繋がっているリビングの窓が開け放してあり、心地良い風が入って来た。
「いい風…」
僕はその風につられて、窓際まで進んだ。
「夕方になると、もうエアコン必要ねぇよな」
「そうだね」
網戸を開けてベランダに出た。


Go Next Page

続きはボタンを押して下さい。
↓↓


感想やメッセージをどうぞ!よかったらお名前入れてください。お返事差し上げます



[TOPへ]