Love Love Love

□ふたりの今が過去になる前に
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 今、此処に二人の男女。

「あのさ、もうこれっきりにしようよ?」
「………、却下だ」

 うげ、と舌出して両手を上げ肩竦めて『お手上げ』ポーズをとる女、ななし。
 之でも、次期少将。

「…で、“約束”だが、
「ちょっ、ちょっとタンマ!!」
「…そいつァ、ならねぇ、な?ななし。」

 目の前で二人掛けの豪華なソファーに悠々と腰据えて葉巻二本を口許に咥わえ、眉間にシワを刻み煙りを吐く男、スモーカー。海軍将校准将。
「嗚呼、ナンでこうなっちゃうのかなぁー」
「…テメェが、弱すぎるンだ。」
「やっぱり、…ダメ?」
「…観念しろや」

 ななしは、上げた両手を頭に乗せ、わしゃわしゃっと掻き肩落として、彼を見遣り片手をヒラリやり、溜め息混じりに了承した。
「…あぁ、はいはい!遣れば良いんでしょう?遣れば!」

 トランプゲームに負けたのは事実。彼の一言に軽く二つ返事をしたのが間違いだった。

“おれとトランプゲームで、テメェが『勝』てば、この欲しかっていた七尺十手はテメェにくれて遣る。が、その逆は之から、……”

 眼前のテーブルに乱雑に散らばるトランプを睨みつけて、スッと視線をスモーカーに写せば、口端上げ弧を描き不適に笑う姿。彼の持つ七尺十手。ななしは無性に欲していた。
 なので、スモーカーはそんな彼女の思想を知っていたからこそ、ななしの尤も、弱い部分を付いて甘い言葉でゲームを持ち込んだ。
 軽率だったかも知れない。だが、もう悔やんでも後の祭りである。ななしはもう一度、溜め息を吐く。今度は深く。
 スモーカーは片手でヒラヒラと、白い紙を摘んではちらつかせて、トランプ上に紙をパンっ!と勢い良く置くと風圧でトランプが舞い上がった。
「さぁ、約束だ」







「上層部の許可を得る前に、サインさせられるなんて、信じられないし!仮にも私、アナタの上司なのに!」
「…次期少将だろ?“次期”。つべこべ謂わず、着いてくりゃあ良いンだ」
「ぐっ!?」
「“今は”まだ同等だ。そこは、履き違えるな?逸れに、之からは
「あぁ!もうっ!わかったから」

 ギロリと睨むが、スモーカーは涼しい顔で葉巻二本をふかふわり。
「…覚えて居なさいよ?」
「………あゞ?生憎と、おれは一々細ェ事は覚えてねぇンでな?」

 彼がそう言い終えた直後、顎で前方を挿す。ななしは、軽く舌打ちして挿す方向に視線を滑らす。
 海賊船が視界に映る。「…奴らを捕縛して来い。」と、彼女は溜め息零して、その場から命令された海賊船へと駆け出した。
 結果は、ななしの圧勝。彼の部下の海兵達は、ななしの戦闘のスタイルに見惚れていた様だ。
「奴ら、弱すぎ!準備運動にも成りゃしない。」
 ななしのその戦闘スタイルとは、足技と劍技。舞う様に青龍刀を扱い、かと思い気や劍舞に見とれていると足技でカウンターを喰らわさられ手痛いのをお見舞いされノックダウン。

「やっぱり、ななし准将はすごいです!」
流石は次期少将ですね!

「タシギもすごいよ?アナタの剣の腕。この先、まだまだ伸びるわよ?」

 タシギは照れ臭そうに若干頬を朱紅に染めて頭に手を置きはにかんだ。

「あ、そう言えば…」
ななし准将は何で、こちらに?

 タシギが姿勢を正して、ななしに聞いた。
「…それ、は、
「あ!そうか、そういう事ですね!スモーカーさん!」
「……」
「え、タシギ?何が、どうそういう事なの?」
 タシギは両手をパンっと打ち鳴らして満面の笑顔で
「やだなぁー。ななし准将、スモーカーさんから聞いて無いンですか?」
「…は?何?を」
「またまたぁ〜、惚けちゃって!この前、ななし准将がスモーカーさんに言ってたじゃあないですか!」

 ななしは頭に沢山のハテナを浮かべて怪訝な表情を向ける。が、タシギの言葉を聞くとピシ、と固まった。
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