からくり。sideG

□ 魔術師の見解 
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「彼はだね、別にあんなことをしたかった訳では無いんだよ。ただほら、何と言うか─────憧れと言うモノは時に残酷なのさ。

 向ける相手への繋がりが深い程、持ち主が純粋な程ね」



 めずらしく書斎に閉じ籠もったカラさんに、僕はお茶を用意していた。カラさんは窓のそばに置かれた、テーブルのセットになっているソファに腰掛けて外を眺めていた。……随分と悠長なことかと思う。



 もうすぐ大変な事態が起きると言うのに。考えもしていないのか取るに足らないから放っているのか。


 
 僕のメンテナンスさえ。



 にしても、だ。

「刹那の処置も玉響の対処も放棄してるんですね」



「おや。不満かい。これは奇妙だ」

 カラさんがそう言いながら笑った。今日初めてだ。さっきまで魂の抜け殻のような顔ははっきり言って不気味だから安心すべきなんだけれど。

 それと不快に思わないとかは関係が無いから。



「奇妙、ですか」
「ああ。ムクイが僕にそんな風に歯向かう顔をするのも不満を見せるのもね。────やはり身内は違うのかな」

「さぁ、どうでしょう? そもそも、身内とは呼べますまい。

 僕は[魂]はともかく
 
[存在]は生まれ落ちていませんから」

 僕は当然の理として口にした。カラさんの瞳が憐れみに揺れたことには触れずに。



「物質化されなかったモノは、“無い”も同然でしょう。繋がりだって、だから、希薄だ」

「じゃあ、どうして気にするのかね。あの、二人を」



「……さぁ?」



 僕は何とも言い難くただ首を傾げた。



 僕にも理由はわからない。

 僕は『カラクリ』だ。変わらず、その事実だけは確実なモノ。だが。



「好ましいのかも、知れません」



 似ているから。そして違うから。


 
 弟関係で“こうなった”背景が。



「投影してるのかい? 『カラクリ』たるきみが」
「どうでしょう?」
「……。まぁ、良いさ。それが『カラクリ』だもの」



 ……。なぜこうにたにたにたにた笑うのか。

 微笑ましく思っているのと愉快に感じてるのが入り交じっているんだろう。わかっているけど。



 だから、ゆるせる訳じゃないんだけど。



「……まぁ、さ」
「……」
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