Novel3

□語らい
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昔の因縁からか、俺と福島は会う度に条件反射で喧嘩をしている。

まぁ、俺的にはそろそろ仲直りをしたいと思うのだが、会う度に牙むいて「シャーッ!!」ってやられたら言い出せない(前言ったけど拒否されたし)。

だから最近はもう、このままこんな犬猿の仲が続いていってもいいか、という気分なのだ。



「うぃ〜〜……ひっく」
「やめとけ福島、いくら酒豪でも呑み過ぎじゃ」
「いやだあ、山口も呑むべ」



それがまさか、こんなことになろうとは。










今日は恒例の新年会で、ほとんどの都道府県が東京に集まっていた。

いつものごとく新年会は夜遅くまで続く。そのため、近隣県以外の県は東京がとったホテルに泊まっていた(何故か神奈川と千葉も泊まっているが)。

新年会も終わり、そのままのテンションで二次会へと繰り出す県達が多い中、俺は気分が乗らないし、明日用事があるので、島根、鳥取と共に宿に残っていた。


「山口ぃ!!」
「何じゃ………って福島!!??」


そうしたら突然、福島が俺(と島根と鳥取)の部屋に来襲してきたのである。


「呑め!!」
「はぁ!?」


で、乱入してきたと思ったら、グラスと酒の瓶を突き出してくる。


「ってお前………酒くさ!!何杯呑んだんじゃ!?」
「うるへ〜………ほら呑め!!」
「座れ!!とりあえず座れ!!何があったんじゃ!!」



酒豪と呼ばれるだけあって、顔こそ赤いものの足元はしっかりしている。
座布団を出すと、大人しく座った。しかし、何処かふて腐れたような顔の福島はさらに酒を注ごうとしたので、さすがにやめろと酒の瓶を奪ってやった。




「どうした?」
「………二次会から帰って来たんだけんど、おらの部屋には誰もいねがった」
「おう」
「でもまだ酒呑みてぇ」
「……ほう(福島でもそんなこと考えるんじゃな)」
「他の部屋の奴らもほとんどいねぇし、おらもずかずか入って行けるほど親しくねっし」
「………で?」
「だから山口んとこ来だ」
「俺んとこならずかずか入れるんか!!」
「あっだりめぇだ!!おら東北と山口んとこしか入れねぇ!!」
「気持ちいいほど即答すんな!!」
「でも本当の事だべ!!」
「ちばけんな(ふざけんな)!!こっちだって今から寝るとこだったんじゃぞ!!」
「あ、島根さんに鳥取さんでねか!!夜分遅くにお邪魔してすいませんねぇ」
「話 を 聞 け 福 島!!しかも俺にはほとんど挨拶なしか!!」
「山口に挨拶はいらね!!」
「んだとコラ!!」


「まぁまぁ、福島、落ち着け」


いつもの如く一触即発状態の俺たちの間に、冷静に割って入ったのは島根だ。


「山口もそう言わんと、福島に付き合ってあげぇ」
「………むぅ、」
「俺と鳥取は岡山と広島の部屋の方で寝るけ、な?」
「………まぁ、島根がそこまで言うんじゃったら………」
「ん、なら俺らは隣に行くけんの。鳥取」
「は、はいっ」


最後に滅多に見せない微笑みを残して、鳥取と共に隣の部屋に去る島根。




「優しいなぁ、島根さん。東北で言うと岩手みたいだべ」
「でも岩手は怒らんじゃろ?」
「まぁ、説教はするけんど声を荒げては滅多にしね。島根さんは怒るんだべか?」
「怒らんかったらああじゃけど怒ったら怖ぇなんてもんじゃ…………これ、福岡が撮った奴じゃ」


あの島根を優しいとか言う福島に、こないだの大噴火のときに遠くから見てた福岡が撮った写メを見せる。


「……………この噛まれそうになってんの、山口か?」
「あぁ。このときは広島が悪ぅて、巻き込まれたんじゃ」
「………確かに怖ぇなんてもんじゃね………」
「じゃろうが」
「誰か他に見たことある県はいんのが?」
「………南関東は一回見とるな」




という会話から、いったん落ち着いた俺と福島の語らいは始まるのである。
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