Novel3
□君の想いが
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8月6日―――――
歴史に残る日―――――
原爆ドーム前広場、石畳のそこには所狭しとパイプ椅子が並べられ、白いテントの下からは献花された花束が溢れている。
「ったく、広島はどけぇ行ったんじゃ」
人々が席につきはじめた中で、椅子の間を縫うように歩いているスーツ姿の少年がいた。それに気付き、広島の県議員が歩み寄ってくる。
「これは、岡山さん」
「ん、あぁ、お久しぶりです………広島は?」
「さぁ、何処かにいらっしゃるでしょう………今日は、米国の方がいらっしゃっているので」
「あぁ…………」
県議員の視線の先をみて、岡山は頷いた。それから県議員と別れると、また広島を探して歩き出す。やがて、見慣れた面々が固まっているのが見えてきた。
「山口」
「広島を見とらんか?おらんのじゃが」
「俺も探してたんだ」
岡山が声をかけると、山口は早速聞いてきた。どうやら目的は同じだったらしい。島根は控えめに立っていて、そんな島根の着物を、緊張した鳥取が握っている。
「広島さん、おらんの?」
「愛媛さん」
鳥取の横に立っていた愛媛が周りを見回してそういった。山口がはぁ、とため息をつく。ずっと言っていたではないか、と顔が語っていて、岡山は不覚にも笑ってしまいそうになった。
「なら、あそこかしら」
「え?」
「前のとき、広島さんが居ったところがあるんよ」
「………あるんなら早よ言えっちゃ」
ぼそりと呟いて、山口がため息をついた。それを目線で宥めながら、岡山は愛媛に聞く。
「それは、何処に?」
「うん、こっち」
くるっと振り向くと、愛媛は歩きはじめる。
「俺が行ってくるから、山口たちは、」
岡山が言いおわる前に、山口も歩き出していた。
「たっぷり説教しちゃる」
「ちょ、山口、」
「冗談っちゃ………行くぞ」
山口が声をかけると、島根も無言で歩きだした。小走りで鳥取もついて来た。
「愛媛さん、こっちで合ってるんですか?」
「そうよ〜」
愛媛に導かれ、岡山たちは住宅街を歩いていた。少し不安になった岡山が聞くが、愛媛はふわっと笑ってまた歩きはじめる。10分ほどそんな問答を繰り返しながら進んでいると、愛媛が足を止めた。
「着いた、ここやわ」
指さす先には、小さな公園があった。
「、広島」
島根がジャングルジムの上を見て呟く。
「あ、」
ジャングルジムの上には、スーツ姿の広島が座っていた。
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