Novel
□雨の日リレー
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(困ったな……降られるとは思ってもみなんだ)
ザァザァと音をたてて降る雨を見て、月詠は眉を寄せる。
おつかいを頼まれ吉原を出た時は、雨雲一つ見当たらなかったのに、おつかいをすませて外にでてみればこの有様だ。
(タクシーを使うか……しかし金もあまり無いしの……)
地下街吉原には排水機能は備わっておらず、今も雨の日にはハッチが閉まるため、月詠は吉原にきてから一度も雨を見たことがない。
初めての雨にうたれて帰るのもいいかも知れない、そう思って走り出そうとしたところで、
どんっ
「うおっ、」
「……ぎ、銀時?」
前から走って入って来た男と、ぶつかった。
「突然降り出したなァ………何、お前ェ、おつかい?」
「そんなとこじゃ。日輪に頼まれての……使え、風邪ひくぞ」
「走り出そうとしてた奴に言われたかねー」
「うるさい」
頬にはりついた銀髪をみて、手ぬぐいを差し出す。銀時は受け取ったが、使おうとはしなかった。
「やれやれ……どうすっかなー…」
「これでは帰れんのぅ……」
知り合いがいるからか、独り言のようにつぶやく二人。
「……あ」
銀時は何かを思いついたらしく声をあげる。
そして月詠のおつかいの袋を奪いとり、そのままがしっと月詠の手を握った。
「ちょっ……」
「んじゃ、万事屋まで走ってくか」
「そんなことしたら濡れて……!!」
「いーっていーって」
「良くない!!」
「濡れてこーぜー!!」
「わっ……!!」
渋る月詠をぐいっと引っ張って、雨の中に駆け出す。
「雨が顔にあたって……!!」
「楽しーだろ!!あっはっは!!」
「……そうじゃな、あははははっ!!」
雨の日リレー
(走れ!!)
雨の日が続いたので……。