Novel
□旅立つ雛に号泣
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星海坊主は仕事にかかずらっていて、地球には来られそうにないとのことだった。神威は春雨に居るおかげで連絡のとりようもなし(とったらとったで大変な事になるのだが)、つまり神楽の親戚縁者は誰も来れないことになる。
「まったく、困った奴らヨ」
しかし神楽の口調や表情は、台詞ほどに困った様子ではなかった。星海坊主は地球にはいずれ必ず来ると言っているし、神威を呼ぶつもりは毛頭ない。ウェディングドレス姿を見せられないのは残念だけれど、と、神楽はからりと笑った。
「でも、そうしたらバージンロードは誰と歩くんだい?」
「そんなの決まってるネ」
関係者に出す招待状を書きながら、新八が聞く。熱心に結婚式の計画書を覗き込んでいた神楽は、長い髪を欝陶しそうにかきあげて、銀時の方を見た。
「…………俺かよ」
「当たり前アル。銀ちゃんにとって私は家族同然、娘同然ヨ」
「そうだね。銀さんなら適任だよ」
胸を張って豪語する神楽。それに新八が同意したものだからたまらない。
「ンなこと言ったってさぁ…………」
「大丈夫ですって!それに銀さんなら、星海坊主さんだって許してくれますよ」
新八は、また手元に目を落として招待状を書いている。神楽が改まって銀時の前まで来て、頭を下げた。
「お願いしますヨ、銀ちゃん」
「…………しゃーねぇなぁ」
「本当カ?やったネ!!」
ウキャッホイ、と神楽が跳び上がる。新八は、にっこり微笑んで銀時に言った。
「じゃあ、燕尾服買わなきゃいけませんね」
「紋付きと袴でいいだろ」
「だめですよ!神楽ちゃんたっての希望で天人風の結婚式やるんですから、服もそれにあった物にしないと」
持っている礼服を思い返して言うと、新八に猛烈な反撃を食らった。
「まぁ、新八に任せるわ」
「かっこいいの、選ばなきゃいけませんね」
「あぁ………」
当の本人を置き去りにして、二人は至極乗り気である。ドレスを決めるときに使った雑誌というのを引っ張り出してきて、頭を突き合わせて何やら相談し始めた。
「バージンロード、ねぇ………」
銀時はそう呟いた。なにかに想いを馳せていた。
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