Novel2
□紫紺の空
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『お前には私がついている』
『たとえ再び憎しみ合う事になろうが………今のおまえは放っておけない…………』
『私は……』
『お前の事が好きだから』
紫紺の空
「………と言う訳で、」
ごほん、と咳をし、エルザが二人と一匹を前に押し出した。
「ウェンディとシャルル、ジェラールを妖精の尻尾へと招待した」
「よろしくお願いします!!」
「「…………」」
ぽかんとする皆の前で、律儀にお辞儀するウェンディに、無言ながらも礼をするジェラール、ツンとしたままのシャルル。
次の瞬間、「かわいーーっ」やら「かっけ〜っ」と騒ぎ出すギルドの魔導士たちに安心しながら、エルザはマスターに話し掛けた。
「マスター」
「うむ、よくやった………ウェンディとシャルル、ジェラールも歓迎しよう………ところでエルザ」
「はい?」
「ジェラールとはどういう関係なのかね?」
「ぶっ!?マ、マスター、何言って……!!」
「ひょほほ♪」
「マスター、あっ、逃げないで下さいっ!!!」
「帰ってきて早々なにやってるのかしら………」
追いかけっこしているマスターとエルザを見て、ルーシィは呆れている。
「ったく、エルザの奴は……まぁ良い、今日は宴じゃーー!!」
エルザに一発拳骨をお見舞いされたマスターがそう叫んで、宴大好きな妖精の尻尾たちは皆拳を突き上げた。
「おいジェラール!!何しんみり立ってんだよ、こっち来い!!」
「わっ!!ナ、ナツ………」
酒盛りがはじまり、エルザもいなくて、ぼうっと立っていたジェラールを、ナツはぐいぐいと引っ張って座らせる。そして、自慢げに話しはじめた。
「おい聞けよ皆!!こいつのくれた金色のうめぇ炎をくったおれは、強ぇ敵を倒して………」
「じゃあ半分ジェラールの手柄なんじゃね」
「ちっげーよ!!こいつは炎をくれただけだ!!」
「ジェラールに失礼だろそれ」
「いや………咎の炎は扱いが難しいし、おれは本当にナツにあげただけだから。ナツの手柄だよ」
「ほら見ろ!!おれが強ぇ!!」
「遠慮しなくていいんだぜ、ジェラール。こいつ放っとくとすぐ調子に乗りやがってからに」
「グレイ………」
どうやってジュビアの拘束を逃れたのか、びしょ濡れのグレイが横に座ってジェラールにそう言いながら、グラスに酒を注いだ。
「何言ってんだグレイ!!勝負しやがれ!!」
「ぶっ!!!……上等だナツ!!!」
聞き付けたナツがグレイに酒をかけて、切れたグレイがナツの胸倉をつかむ。
「やれやれーー!!」
「ふふ………ははははっ」
喧嘩団子にルーシィを巻き込み怒られている二人の姿をみて、自然に笑みが零れた。
「ジェラール」
話し掛けられて振り返ると、ちょっとびっくりしたようなエルザが立っていた。
「エルザ」
「……どうした?」
「あぁ、ナツとグレイが喧嘩して………ははっ、ほら、ルーシィに怒られてる」
「そうか………ジェラール」
「ん?」
「……いや、何でもない……面白いだろう?妖精の尻尾は」
優しいエルザの笑みに、つかの間面食らったジェラールは、ふっと笑った。
「……あぁ、良いギルドだな!!」
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