Novel2
□悪夢
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「ふぅ………これでよし」
朝食をテーブルに並べ終えたジュビアは、壁に掛けてある時計を見上げた。
「7時か………」
同居人は、まだ起きてきていない。彼の寝起きが悪いのは、一緒に暮らしはじめて知ったことだった。
「そろそろ…………」
エプロンをはずし、寝室へ向かう。寝室のドアを開けようとした瞬間、ドアはひとりでに押し開かれた。
「あ………グレイ様」
「…………」
のっそりと、グレイがドアの向こうに立っていた。
「………ジュビア」
「え…………グ、グレイ様!?」
きょとんとグレイを見上げるジュビアを、グレイが突然抱きすくめた。腕に力をいれ、首筋に顔を埋めるグレイに、ジュビアは身動きをとれないでいる。
「…………夢」
「え?」
「夢を見たんだ」
長らくそうしていたグレイが、ぽつりと呟いた。
「雨の中で………お前がいて、」
「ジュビアが、」
「手をのばすんだけど、掴めねぇんだ」
グレイが、声を震わせる。
「やっと掴んだと思ったら………消えた」
「………グレイ様」
「………消えて………」
グレイが、ジュビアの温もりを感じようと、腕の力を強める。
「大丈夫ですよ、グレイ様………ジュビアは消えません」
そんなグレイの背中に手を回して、ジュビアは安心させるように呟いた。
「ジュビア、」
「ジュビアは、グレイ様の前から、消えません」
「…………一生?」
「一生です」
その言葉に安心して、グレイはジュビアの体を離した。
「…………すまねぇ」
「大丈夫ですよ」
ご飯にしましょう、と言って、ジュビアはグレイを居間に誘った。
悪夢
(夢なんて、ただの夢)
(眠るときの、ただの幻)
たまに弱くなるグレイ様と、強いジュビアが書いてみたかったのでした。
同棲設定だし、呼び捨てでも良いかなぁと思ったのですがね、ジュビアの呼び捨てが思い浮かべれず…………結局グレイ様呼び。
というか、バットエンドにしてしまうところでした…………危ない危ない(-.-;)