Perfect marionet becomes human.

□第二話
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「……さくら?」
「ほえ、起こしちゃった?」

目を覚ますと、さくらがいた。見渡すと知世も近くにいる。

「知世も、いたのか」
「ええ。お体は大丈夫ですの?」

体を起こしながら、私は知世の方を向いた。心底心配そうな表情をされて、何だか胸が温かい。

「問題無い、平気だ」
「安心しました。ちなみに、そういう時は「大丈夫、ありがとう」と言うものですわ」
「大丈夫、ありがとう……か」

知世の言葉に、私はまた間違った事を言ったのかと頭を抱えた。本当に私は言葉を知らなさすぎる。
人を傷付ける言葉ばかりを覚えて来たから。

「怒っているわけではありませんから、お気になさらず。まだお休みになった方が」
「いや、本当に大丈夫だ。二人共、見舞いに来てくれて……その、ありがとう」

体が軽くなっている。きっともうきちんと治ったのだろう。私はまだたどたどしいお礼を言った。
知世は笑ってくれた。

「ところで、どうやって鍵を開けたんだ?雪兎か?」
「うん、玲ちゃんのお見舞いに行きたいですって言ったら鍵を貸してくれたの」

一人暮らしだからと、私の家の合い鍵は雪兎が持っている。その鍵をさくらや知世、桃矢に渡すくらいはよくある事だった。
遊びに来てくれる事もあるし、さくら達なら来る時には必ず連絡をくれるしな。

「そうか」
「えっとね、これ今日の宿題。音読は無理ならしなくてもいいって寺田先生が言ってたよ」
「分かった、ありがとう」

毎日毎日、体調の良し悪しに関わらず魔法の勉強をしていた頃に比べれば、学校の宿題くらいは容易い。あの頃の事が今役立つとはなとおかしくなった。

「あっ、そうだ。あのね、これ知世ちゃんと買ったの。お見舞いにって」
「おいしいと評判のお店ですから、きっと玲ちゃんもお好きではないかと」

そう言って、色鮮やかな美しいショートケーキを見せられた。私は驚いて目を見開いた。
確かに甘い物は好きだ。でも、きっと今の私ならそれだけじゃ足りない。

「さくら、知世。一緒に食べよう。三人で食べた方が、私は好きだ」
「まあ」
「いいの?」
「ああ、皿を持って来るか」
「待って、私がやるから休んでてね!」

私を動かすまいと、さくらが慌てて準備をしに行った。思わず素早い行動だなあと感心する。

「本当、さくらは可愛いな」
「ええ、本当に」

さくらが持ってきたケーキを食べると、どんな薬よりも効いたような気がした。
その後、さくらと入れ違いのように来た雪兎に鍵を返して、ケーキの話をした。

「へえ、どこのケーキ?気になるなあ」
「学校近くの所じゃないか?私は行った事が無いが、店の前なら通った事がある」
「そうなんだ。じゃあ、今度僕も買って来ようかな」
「出来れば同じ物は避けてくれ、たくさん種類があるらしいから全部食べてみたい」
「いいよ、分かった」
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