Which is right Moon's Guardian?

□月と始まり
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次に目を開けた時、洋館の中に居た。目の前にいた男は私のよく知る男だった。

「初めまして、月(ユエ)。私は君を創ったクロウ・リードという」
「―――――……」

私は目を見開いたまま、何も言えなかった。彼がどうして私の目の前で動いているんだ?
彼は、私を何と呼んだ?

「……私を、ユエと、呼んだのか……?」
「ええ」

クロウ・リードは優しく笑いかけた。隣には先に生まれた太陽の守護者「ケルベロス」が居た。
混乱したまま、私は自分の格好を見た。映像で見たままの「ユエ」だった。
ただ少し、女性っぽい印象を受ける外見に変わっていた。

「私が、ユエ……」

床に着くほど長い髪も、銀色で美しくて。
ただ、私が会いたかった人には二度と会えない。
それが少しだけ寂しかった。

「クロウ・リード、私の主。宜しく頼む」
「はい」

私に「月の守護者」が務まるのか不安だけれど、やれる所までやろう。
それが、私に与えられた役目だと思えるから。

「俺はケルベロスな!ユエ、俺も忘れんなよ!」

自分の存在を主張する彼が、大阪弁じゃないのに気付いて目を見開いた。
何と言うか……ケルベロスであって、ケルベロスでないような違和感だった。

「……どうした?ユエ」
「いや……」
「あ、俺だと不満だってか!」
「そうじゃ」
「キィーッ!!」

何も言わない間に誤解され、訂正しようとしたが自分の世界に入っているのか全く取り合ってもらえなかった。

「ユエ、お前性格わっるいな!」

そう言われて、再び目を見開いた。初めて言われたけれど、裏表のない真っ直ぐな言葉で嬉しかった。

「何とでも言え、私はクロウの言葉以外聞かん」

わざとそう言って、ケルベロスへの誤解を解くのをやめた。すると、クロウが笑いだした。

「クロウ、笑い事じゃないだろ!ユエを創り直せないか?」
「失礼だな、ケルベロス。お前こそ創り直された方がいいんじゃないのか」
「ムッキィーッ!」

クロウの笑い声がだんだん大きくなっている。私も楽しくなって笑ってしまった。その声にケルベロスも混ざって。

転生も悪くない。そう思えてしまった。
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